公開日: 2023/04/06
更新日: 2024/09/30
出っ歯の原因、診断基準や治療方法、費用を含めた完全ガイド。マウスピースなどの矯正治療、セラミック治療、子供の出っ歯の治療法など、出っ歯に関する全ての情報を提供します。
なお、この記事の文章は、専門書籍や論文、専門歯科医師の意見をもとに独自に書かれています。
記事の編集・責任者歯科医師岸秀樹先生
千賀デンタルクリニック アトレヴィ巣鴨医院 院長。日本大学歯学部 卒業。日本口腔外科学会 認定医。
出っ歯(上顎前突)とは、横から見た時に、下の歯よりも上の歯が前方へ突出している状態を言います。
通常、上の前歯と下の前歯の距離(オーバージェット)は2~3㎜ですが、上の前歯が下の前歯よりも4㎜以上前方に出ている場合、出っ歯と言えるかもしれません1)。
平成28年に厚生労働省が実施した調査では、12歳~20歳のうち軽度の出っ歯(オーバージェットが4~5mm)は33.6%、重度の出っ歯(オーバージェットが6mm以上)は6.5%と、日本人の約4割以上が出っ歯のようです。
"日本人の10人に1人が出っ歯"と書かれているページもありますが、それは重度の出っ歯の割合を言っている場合が多いようです2)。
自分では出っ歯じゃないと思っていても、実際には出っ歯だったということもあります。まずは歯科医院で正しく検査と診断してもらうことが大切です。
ただ、「私は出っ歯?よく分からない」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。そこで、簡単な3つのセルフチェック方法をご紹介します。
出っ歯の場合、歯が邪魔で口を閉じにくくなります。そのため、口を閉じようとすると筋肉に力が入り、梅干しのようなシワが顎にできます3)。
Eライン(イーライン)とはエステティックラインの略で、鼻の先端とあごの先(オトガイ)を結んだラインのことです。このライン上もしくは内側に唇があると美しいとされています4)。
Eラインに歯がぶつかる場合は、出っ歯の可能性があります。この状態を口ゴボと呼ぶことが多いです。
鼻唇角(びしんかく)とは、鼻と上唇の間の角度のことです。
バランスの取れた横顔をもつ人はこの角度が一定の範囲内5)に収まっており、日本人では90度前後が良い6)と言われています。
90度よりも角度が小さい場合、出っ歯の可能性があります。
ひとことで出っ歯と言っても、その種類によって治療法が全然違うこともあります。
それでは、出っ歯にどんな種類ががあるのか、どんな原因があるのかをについて見ていきましょう。
このタイプは、上下の骨の位置に問題はありません。しかし、前歯の角度が前方に飛び出ていることで出っ歯となります。
出っ歯を改善することで、横顔の改善も期待することができるタイプの出っ歯です8)。
「出っ歯じゃないのに口が出てる」と感じる方はこちらのタイプであることが多いです。
上下の骨の位置が違うことが原因の出っ歯です。
上の顎の骨が前に出ているタイプと、下の顎の骨が後ろに引っ込んでいるタイプに分かれます。
骨の位置を改善するには、外科手術が必要となることもあります9)。
出っ歯には、たくさんの原因があります。原因によって治療法が変わることもありますので、一つずつ見ていきましょう。
歯のサイズが顎のスペースに対して大きすぎると、歯が前方に突出し出っ歯になることがあります7)。
上の顎の骨と下の顎の骨の成長度合に差があると、出っ歯になります。特に日本人では、下の顎の骨が後ろに引っ込んでいるタイプが多いと言われています。
鼻づまりがあったり、扁桃腺が大きかったりして、鼻で息ができず口呼吸を続けると、唇や舌など口の筋肉のバランスが崩れ、出っ歯を引き起こすことが分かっています10)。
特に扁桃腺が大きい場合口呼吸になりやすく、それにより下の顎が引っ込んだような横顔になることがあります。この横顔を「アデノイド顔貌」と呼びます。
※アデノイドとは、いくつかある扁桃腺の1つの名前
「指しゃぶり」や「おしゃぶりの使い過ぎ」、「舌を前に突き出す癖」「爪や下唇をかむ」といった良くない癖があると、歯や骨に良くない力がかかり出っ歯を引き起こす可能性があります11),12)。
特に、指しゃぶりは3歳までにと止められると、5歳時点で咬み合わせが改善することが多いため、早めの対応が必要です13)。
歯周病は、歯茎が炎症を起こしたり、歯を支える骨が溶けてしまったりする病気です。これが進行すると、歯がグラグラになったり、最悪の場合抜け落ちたりする可能性があります。
歯周病によって歯並びや咬み合わせが変わってくると、出っ歯になってくることがあります。
残念なことに、歯列矯正治療の失敗によって出っ歯になってしまった人がいるようです。(参考:公益社団法人日本臨床矯正歯科医会)
歯のサイズが顎のスペースに対して大きすぎるにも関わらず、無理やり歯を並べてしまうと、治療開始前より出っ歯になってしまうこともあります。
出っ歯は、見た目だけでなく、他にも様々なデメリットがあることがわかっています。これから、見た目以外の5つのデメリットを解説します。
当てはまる項目が多い人は、出っ歯の治療をおすすめします。
出っ歯の人は、上下の歯が適切に咬み合わないことがあり、食べ物を噛み切るのが難しい場合があります14)。
前歯で咬みにくい人は、出っ歯の治療がおすすめです。
出っ歯は、発音に影響を与えることがあります。特に、サ行やザ行が発音しづらくなりやすいです15)。
友達とのおしゃべりで、「え?なんて?」と聞き返されることが多い人は、出っ歯が原因かもしれません。
出っ歯により口呼吸が続くと、口の乾燥やツバの減少により細菌の繁殖を引き起こします16)。
その結果、口臭や虫歯・歯周病のリスクが増加する可能性があります。
出っ歯の人は、他のいろいろな歯並びの中でも最も外傷が多い(歯をぶつけやすい)歯並びです17)。
特に重度の出っ歯では、外傷のリスクが2倍になることがわかっています18)。
歯をぶつけると、歯が折れてしまったり抜けてしまったりすることがあるので、歯を守るためにも、出っ歯の治療をおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。
下の顎の骨が後ろに引っ込んでいるタイプの出っ歯の場合、空気の通り道(気道)がせまくなり、睡眠時無呼吸症候群のリスクが増加することがあります19)。
これにより、眠気や頭痛、高血圧などの健康問題を引き起こす可能性があるため、出っ歯の治療がおすすめです。 無料カウンセリングを予約する
出っ歯の治療法は、大人と子供で大きく変わります。
まずは、大人の出っ歯の治療法について詳しく説明します。
治療方法 | ワイヤー矯正 | マウスピース矯正 | 外科矯正 | セラミック治療 |
---|---|---|---|---|
治療イメージ | ||||
重度の出っ歯 | ○ | △~○ | ◎ | △ |
軽度の出っ歯 | ○ | ◎ | × | ○ |
費用 | 50~100万 | 20~80万 | 保険適応の 場合もあり | 5~15万/1歯 |
治療期間 | × 数ヶ月~3年 | ○ 数ヶ月~1年 | × 2年~4年 | ◎ 1週間~1ヶ月 |
治療における 歯のダメージ | ○ | ○ | ○ | × |
長持ち度 | ○ | ○ | ○ | × |
主な”大人”出っ歯治療の方法は歯列矯正です。
ブラケットやワイヤーを使った従来の矯正治療や、透明で目立たないマウスピース矯正などの種類があります。
マウスピース矯正は、透明なマウスピース(アライナー)を使って歯を動かし、出っ歯を治す方法です。
見た目が目立たず、取り外しが可能なため、ほぼ普段通りに生活することができます。
マウスピース矯正には様々な種類のマウスピースがあり、費用が比較的安く抑えられるのが特徴ですが、すべての歯並びに対応できるわけではありません。
重度の出っ歯や骨の問題がある出っ歯は、マウスピース矯正だけでは十分な治療効果が得られないことがあります。
①ラビアル矯正
ラビアル矯正は、歯の表側(唇側)に装置を取り付ける方法です。
一般的なワイヤー矯正で使われる手法で、出っ歯の動きをコントロールしやすいとされています。しかし、装置が目立ちやすいことがデメリットです。
②リンガル矯正
リンガル矯正は、歯の裏側(舌側)に装置を取り付ける方法です。目立たないため、見た目を気にする方に適しています。
ただし、歯の裏側に装置があるため、歯磨きが大変です。また、舌の違和感がが強くなり、舌に口内炎ができることもあります。
③ハーフリンガル矯正
上の歯の裏側(舌側)、下の歯の表側(唇側)に装置を取り付ける方法です。
ラビアル矯正とリンガル矯正のメリットデメリットを半分ずつにした矯正方法です。
上下のあごの骨の位置が大きくずれている出っ歯の場合、歯列矯正だけでは治療が難しいことがあります。その場合、外科手術を含めた矯正治療が必要になります。
※顎の骨のずれが大きく、外科矯正が必要な顎変形症と診断された場合、矯正治療が保険適応となる場合があります。ただし、どの歯科医院でも保険治療ができるわけではなく、外科手術の対応が可能な大学病院等の専門施設で治療されることが多いです。詳細については、歯科医院にご相談ください。
セラミック治療は、歯を削ってラミネートベニヤやクラウンと呼ばれる被せ物をつけることで、出っ歯を治す方法です。
比較的短期間で改善でき、自然な見た目と高い耐久性が特徴です。
ただし歯を削るので、治療後に歯がしみたり痛んだり、時には歯の神経の治療が必要になることがあります。結果的に歯の寿命を縮めてしまう可能性があることがデメリットです。
特に出っ歯のセラミック治療では、前に飛び出ている前歯の向きを無理やり変更することが多いため、歯の神経をとったり抜歯したりすることが多くなります20)。
あとで後悔する人も多く、自分の歯を長持ちさせたい方にはおすすめできません。
子供のころに出っ歯の治療をすることで、大人になってからの矯正治療が不要になることがあります。また、子供の矯正は大人の矯正よりも短期間で改善できることが多いです。
子供向けの治療法を見ていきましょう。
口腔筋機能療法(MFT)とは、指しゃぶりなどの良くない癖や習慣を改善し、正しい舌や唇の筋肉の使い方を獲得する治療方法です21)。
出っ歯を含めた様々な歯並びの改善や予防にも有効です。
ボタンを使用した唇を閉じるトレーニングや、舌を持ち上げるトレーニング(popping)などがあります22)。
特に指しゃぶりは、3歳までにやめると、5歳時点で咬み合わせが改善していることが多いとわかっています。
良くない癖は早めに治してあげると効果的なようです。
マウスピースを用いて、良くない癖を取り除いたりお口の筋肉のバランスを整えることで、適切な成長を促し、大人の歯が生えてくる土台を作ることができます23)。
3歳~10歳の間が効果的と言われおり、日中1時間程度+寝るときに装着することが多いです。
子供でも、歯の生え方や時期によっては、大人と同様に歯列矯正治療が行われることがあります。
ただし、子供の場合は、成長期に合わせた矯正装置の選択が重要です。
7歳~9歳の前歯の生え変わりの時期には、2×4(ツーバイフォー)といって、生え変わった大人の前歯だけをワイヤーで矯正することが多いです。
成長期の出っ歯の治療では、上下のあごの骨の位置がずれないように成長を誘導することが重要です。
上の顎の骨が前に出て、成長を止めたい場合は、ヘッドギアという装置を用いることがあります。
また、下の顎の骨が引っ込んでいて、成長を促したい場合は、アクチバトールや咬合斜面板といった装置を使用することがあります24)~27)。
子供の場合、永久歯がまだ生えそろっていない時期に出っ歯でも、永久歯がすべて生えそろい、顎の成長が完了すると、自然に歯並びが改善されることがあります。
しかし、大人の出っ歯や骨が原因の出っ歯、習慣性の出っ歯(指しゃぶりや舌の癖など)に関しては、自然に治ることはありません。
「割りばしを唇にはさむ」と出っ歯が治るという話を聞いたことがあるかもしれません。
確かに、多少は唇の筋力トレーニングになる可能性はありますが、大人の出っ歯が治ることはありません。
出っ歯を治そうと歯を無理やり中に押し込んだりすると、歯の神経がダメージを受け、取り返しのつかないことになる可能性がありますので、絶対にやめましょう。
今までお話したように、大人の出っ歯は、自然に治ることはありません。放っておくと、見た目だけではなく、全身の健康に影響することもあります。
出っ歯でお悩みの方は、早めに歯科クリニックに相談しましょう。
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この記事の参考文献
1)W.R.Proffit 著高田健治 訳:<新版>プロフィトの現代歯科矯正学.クインテッセンス出版
2)厚生労働省:平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要,P.25
3)日浅早紀ほか:小児不正咬合患者の口腔機能異常の特徴. Journal of Oral Health and Biosciences, 35(1),1~8,2022
4)Robert M. Ricketts:Esthetics, environment, and the law of lip relation. American Journal of Orthodontics,54(4),272-289,1968
5)James A. McNamara Jr.:A method of cephalometric evaluation. American Journal of Orthodontics,86(6),449-469,1984
6)Kuniaki Miyajimaほか:Craniofacial structure of Japanese and European-American adults with normal occlusions and well-balanced faces. American Journal of Orthodontics,110(4),431-438,1996
7)瀧上啓志ほか:成人正常咬合者の歯,歯列,顎骨の形態変化.日本口腔科学会雑誌,50(5) : 293-298, September, 2001
8)高木伸治:著しい口唇部突出を伴う歯槽性両顎前突症例. 北海道矯正歯科学会雑誌,37(1),64-65,2009
9)小野重弘:下顎関節突起低形成および開咬を伴う骨格性上顎前突症に対し上顎単独骨切りを適用した1例. 日本顎変形症学会雑誌,29( 1),59-65,2019
10)進藤由紀子:小学生における歯列・咬合と口呼吸との関連性について. 小児歯科学雑誌, 47(1),59−72,2009
11)石川朋穂ほか:おしゃぶりについての実態調査. 小児歯科学雑誌,44(3),434-438,2006
12)後藤滋巳ほか:拇指吸引癖を伴う強度な乳歯列上顎前突の早期治療について. 小児歯科 学雑誌,32(5),1165-1172,1994
13)米津卓郎ほか:吸指癖が乳歯列咬合に及ぼす影響に関する累年的研究. 小児歯科学雑誌, 36(1),93-100,1998
14)Magalhães IBほか:The influence of malocclusion on masticatory performance. A systematic review. Angle Orthod,80(5),981-987,2010
15)M. ZHANGほか:The impact of malocclusion and its treatment on quality of life: a literature review. INTERNATIONAL JOURNAL OF PAEDIATRIC DENTISTRY, 16(6),381-387,2006
16)石川純ほか:口腔内の気流の可視化-口呼吸常習者はムシ歯や歯槽膿漏にかかりやすい.流れの可視化,5(17),86-94,1985
17)QV Nguyenほか:A systematic review of the relationship between overjet size and traumatic dental injuries. European Journal of Orthodontics, 21(5), 503–515,1999
18)Ulf Glendo:Aetiology and risk factors related to traumatic dental injuries – a review of the literature. Dental Traumatology, 25(1),19-31,2009
19)片岡弘一:睡眠時無呼吸症候群を伴った小下顎症の1例. 日本口腔外科学会雑誌,35(1),168-173,1989
20)田邉憲昌:補綴的アプローチによる上顎前突と過蓋咬合の治療. 日本補綴歯科学会誌, 3 (4),381-384,2011
21)日本口腔筋機能療法学会
22)鬼頭佳子ほか:歯学部附属病院小児歯科 における口腔筋機能療法 について. 小児歯科学雑誌,41(4),756-765,2003
23)大塚淳ほか:プレオルソで治す歯ならび&口呼吸.クインテッセンス出版
24)Tulloch, J. F.ほか:The effect of early intervention on skeletal pattern in Class II malocclusion: A randomized clinical trial. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics, 111(4),391-400, 1997
25)Tulloch, J. F.ほか:Influences on the outcome of early treatment for Class II malocclusion. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics, 111(5),533-542,1997