公開日: 2023/11/16
更新日: 2024/11/11
ひどい出っ歯で悩んでいる人は多いのではないでしょうか。自力で治せるのかについて知りたい人も多いことでしょう。
この記事では、知っておくべき出っ歯の基準とは何か、ひどい出っ歯にどう対処すればいいのかについて、出っ歯の診断基準から日常生活での癖や口腔ケアの重要性、さらには専門的な治療方法までを徹底的に解説します。
出っ歯に関するあなたの疑問が解消され、よりキレイな歯並びに近づけるはずです。
記事の編集・責任者歯科医師高橋涼太先生
千賀デンタルクリニック分倍河原MINANO医院 院長。日本大学歯学部 卒業。
出っ歯とは、上の前歯が下の前歯よりもかなり前方に突出している状態を指します。
では、どのようにして「出っ歯」と診断されるのでしょうか?
歯科の専門家が見る「出っ歯の基準」を3つのポイントに絞りそれぞれについて説明します。
出っ歯であるかどうかは、上の前歯が下の前歯に比べてどれだけ前方に突き出ているかで判断します。
前歯の突出具合を測る際の専門用語として「オーバージェット」があります。これは、上下の前歯の先端が前後にどれだけ離れているかを測定するものです。
理想的な歯並びの場合、オーバージェットは2〜3mm程度です。4mmを超えると「出っ歯」と判断。さらに、6mm以上の場合は「重度の出っ歯」と見てよいでしょう。
前後の距離が離れるほど、噛み合わせが悪くなり、健康上の問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
アゴの発達が小さいと、特に大きな前歯の場合、歯列に十分なスペースが足りなくなり、歯が重なったり、斜めに傾いたりして出っ歯になる可能性があります。これは、先天的な要因や、生活習慣と関係していることがあります。
舌を前歯に押し付ける、下唇を吸う、噛む癖などの生活習慣により、歯に力が加わり続けると、前方に歯が動き出っ歯になる可能性もあるでしょう。
ただし、前歯の傾き具合などを自己判断するのは難しいため、自分の前歯を見て違和感がある場合は、歯科専門医へ行き歯並びの状態を確認してもらうとよいでしょう。
横顔において、鼻先・上唇・下唇・アゴが一直線に並ばず、口元が前に出ている場合は出っ歯の可能性があります。
自分でセルフチェックする場合は、定規や、割りばしなどを使って、鼻の先、上唇、下唇、アゴが一直線に並んでいるかをチェックしてみましょう。
この時に、横のラインが一直線で並ぶと理想的ですが、口元が突出している場合は「出っ歯(上顎前突)」と診断されることがあります。
しかしながら、横顔のラインを自己判断することは意外に難しいため、出っ歯が疑われる場合は医師による正しい診断を受けることをおすすめします。
歯科医へ受診前に、自分で出っ歯のセルフチェックができると不安が軽減しますよね。次に自宅でできる簡単な出っ歯チェック法を4つ紹介します。
出っ歯の場合、前に突出した歯が邪魔をして口が閉じにくい状態になっています。
そのため、口を閉じる際は口元の筋肉に余分な力が入り、アゴにしわができやすくなります2)。セルフチェックをして口を閉じた時に、アゴに梅干しのようなシワができた場合は出っ歯の可能性があります。
前歯が出ていると、歯が邪魔をして口を閉じづらくし、口が開いた状態が習慣になってしまった方もいらっしゃるでしょう。これは出っ歯の方にある特徴の一つです。
口が開いた状態が続くと、歯の健康上にも悪影響を及ぼすことがあります。
・口臭のリスクを高める
・唇の乾燥や裂傷
・唾液分泌の減少
・虫歯や歯周病のリスク上昇
このように、歯並びの問題だけでなく歯の健康問題にも注意が必要です。口呼吸が習慣になっていて、歯並びも気になる方は、出っ歯の可能性を疑いましょう。
出っ歯の場合、前歯で固い果物や肉などを噛むときに、負担を感じる方もいらっしゃるでしょう。
このような場合、前歯で食べ物を噛み切ることが難しいため、奥歯で長時間すりつぶす必要が出てきます。
噛み合わせが悪い状態で奥歯に負担がかかると、アゴにも負担が増し、ひどくなると顎関節症を引き起こす可能性もあります。
さらに、噛み合わせの不安定さは、歯ぎしり、食いしばりも引き起こす場合があり、摩擦による歯のすり減り、歯が欠ける、などほかの問題につながる可能性も。嚙み合わせに問題を感じる場合は、歯科医への相談をおすすめします。
上の前歯2本がほかの歯より大きく、際立って目立つ場合は出っ歯の可能性があります。
上の前歯2本が大きく、歯の列に収まりきらず前方に突出している場合、出っ歯の症状を示しているかもしれません。
前歯の大きさは、遺伝的要因と、アゴの成長や生活習慣などの環境要因の両方が影響します。前歯2本が目立ち歯並びも気になる場合は、歯科医への相談をおすすめします。
舌癖とは、舌を歯や口の中で不自然に動かす癖のことです。
例えば、舌を常に前歯の裏に押し付ける「舌突出癖」は、歯を前方に押し出す力となり、出っ歯を引き起こす原因になります。
正常な呼吸は鼻を通して行われ、舌は上顎に軽く触れる「スポットポジション」と呼ばれる位置にあります。舌がこの位置にあることで、舌の圧力と頬の内側の圧力、唇の力のバランスを保ち、歯列や噛み合わせが適切に維持されます。
しかし、口呼吸の場合、口が開いた状態が続くため、舌の位置が下がり上顎の成長を妨げてしまいます3)。
その結果、歯列が狭くなり出っ歯になりやすくなるのです。
指をしゃぶると、指による圧力が前歯にかかります。この圧力が継続することで、前歯が前方に押し出されるます。
特に乳歯期や永久歯が生え始める時期にこの癖が続くと、歯並びに大きな影響を及ぼし、出っ歯の原因になるのです4)5)。
歯周病や虫歯になると、出っ歯になりやすくなります。
特に歯周病は、歯を支える骨を弱らせることでフレアーアウトという上の前歯がどんどん前に傾くという現象を起こします。
実際に日本の成人の歯周病罹患率は高く、後天的に出っ歯になるリスクとなっています。
一般的に出っ歯は遺伝すると考えられがちですが、実際には歯や骨の形や大きさが遺伝します。
そのため、親が出っ歯である場合、子供も出っ歯になるリスクが高まります。
出っ歯の治療期間はどれくらいなのでしょうか。子どもと大人、症状により治療期間は異なります。次に子どもと大人の治療期間の違いについて解説します。
成長段階である子どもの出っ歯の治療にかかる期間は、個人差があります。
治療期間は、アゴの成長を利用する一期治療の場合、1〜2年程度が目安です。一期治療とは、子どもの成長期に、アゴの成長を利用して出っ歯を改善することを目的とする治療法。
しかし、一期治療で改善が見られないケースもあります。この場合、細かい歯並びの調整が必要な二期治療が必要となります。さらに、ワイヤーやマウスピースを使った二期治療をおこなうと、1〜3年程度の治療期間がかかります。
つまり、一期治療はアゴの成長を促しながら歯並びを整える治療。一期治療で改善できないケースは、二期治療で歯並びを細かく調整する必要があり治療期間も長くなります。
大人の出っ歯の治療期間も歯並びの状況によって異なります。
軽度の出っ歯で、部分的な矯正で対応できる場合は、マウスピース矯正で6ヶ月以上、部分的なワイヤー矯正で約3ヶ月〜が目安になります。
しかし、骨格的な問題や、かみ合わせの調整が必要な場合は、全体的な矯正治療が必要となり、2年半以上かかるのが一般的です。
大人の場合、治療法や出っ歯の程度により治療期間が異なるといえます。治療期間はあくまで目安と思っていただき、信頼できる歯科医の診断のもと、治療を継続していくとよいでしょう。
ひどい出っ歯は、見た目だけでなく様々な影響を引き起こします。
ここでは、ひどい出っ歯によって生じる良くない現象やデメリットについて解説します。
ひどい出っ歯の影響の1つとして、「口ゴボ」という状態が挙げられます。
口ゴボは、前歯が唇を押し出し口全体が前方に突出することで、横顔がボゴっと出て見えることです。
出っ歯が進行すると、歯を利用する音である「さ行」などの発音に影響することがあります6)。 このような滑舌の悪化は、日常会話に影響を与えます。
出っ歯は上唇を押し出すため、口が半開きの状態になりやすくなります。口が開いていると、口内が乾燥し、細菌が繁殖しやすくなります7)。
その結果、虫歯や歯周病、さらには口臭の原因となるのです。
出っ歯を自力で治す方法として、舌の位置を改善する方法や口周りの筋肉を鍛える方法などがあります。
しかし、出っ歯を治すために自分でトレーニングする方法はおすすめできません。というのは、間違った方法でトレーニングを行うと、歯や歯茎にダメージを与える可能性があるからです。
出っ歯には様々な原因があり、自力での矯正は不可能です。
インターネット上では、自力で出っ歯を治したという人たちの体験談が見られます。 タレントの磯部希帆さんは、実際に自分で出っ歯を治したようです。
自力で出っ歯が治ったという体験談は、少しでも治療費を安くしたいと考える人にとって魅力的かもしれません。しかし、どんなトラブルが起こるか分かりませんので、絶対にやめてください。
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使用して歯を徐々に動かす方法です。 この治療法は、見た目が目立たず、取り外しが可能なため、日常生活においても不便さを感じにくいと言うメリットがあります。
マウスピース矯正の特徴をまとめると、次のようになります。
期間: 1~3年
費用: 約30~100万円程度
メリット:
・透明なマウスピースを使用するため、目立たない
・取り外しが可能で、食事や歯磨きが容易
・痛みが少ない
デメリット:
・1日20時間以上の装着が必要
・抜歯が必要な出っ歯は適用できないことも
ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを使用して歯を動かす方法です。 ワイヤー矯正の特徴をまとめると、次のようになります。
期間: 1~3年
費用: 約70~150万円程度
メリット:
・抜歯が必要な出っ歯にも対応可能
・取り外しがないので自己管理が不要
デメリット:
・見た目が目立つ
・痛みや口内炎が生じやすい
・費用が高い
セラミック矯正は、歯の色に近いセラミックを歯に被せることによって、歯並びきれいにする治療です。マウスピース矯正やワイヤー矯正のように歯を動かす必要はありませんが、歯にダメージを与えてしまいますので、おすすめできません。
矯正治療に比べ短期間での治療が可能ですが、歯を削り、神経を抜くこともあるため、歯の寿命を縮めます。セラミックが外れたり割れたりするリスクもあります。
出っ歯が非常に重度の場合、特に上顎が骨ごと前方に突出している状態では、単なる矯正治療だけでは不十分で手術が必要です。
例えば、上顎骨切術では、上顎骨を切削し、上顎全体の位置を調整します。
手術後の回復期間には通常は数週間から数ヵ月を要します。この手術は、出っ歯の状態が非常に重度で、他の矯正方法では対応が難しい場合に選択されることが多いです。
この記事では、ひどい出っ歯の診断基準や原因、専門的な矯正治療までを徹底的に解説しました。
出っ歯は見た目だけでなく、口腔内の健康や発音にも影響を及ぼすため、適切な対処と治療が必要です。自己判断での治療はリスクが伴うため、専門家の診断とアドバイスを受けることをおすすめします。
美しい笑顔と健康な口腔環境を手に入れるために、適切な治療法を選びましょう。
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歯科医師が、治療後にどんな歯並びになるかや費用の詳細を説明します。気になることがあれば何でも質問できます。
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スマイルモア矯正を始める場合は、お申込用紙にご記入いただきます。一旦、お家に持ち帰って検討してももちろんOKです。
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この記事の参考文献
1)厚生労働省:平成28年 歯科疾患実態調査結果の概要,P.25
2)日浅早紀ほか:小児不正咬合患者の口腔機能異常の特徴. Journal of Oral Health and Biosciences, 35(1),1~8,2022
3)進藤由紀子:小学生における歯列・咬合と口呼吸との関連性について. 小児歯科学雑誌, 47(1),59−72,2009
4)石川朋穂ほか:おしゃぶりについての実態調査. 小児歯科学雑誌,44(3),434-438,2006
5)後藤滋巳ほか:拇指吸引癖を伴う強度な乳歯列上顎前突の早期治療について. 小児歯科 学雑誌,32(5),1165-1172,1994
6)M. ZHANGほか:The impact of malocclusion and its treatment on quality of life: a literature review. INTERNATIONAL JOURNAL OF PAEDIATRIC DENTISTRY, 16(6),381-387,2006
7)石川純ほか:口腔内の気流の可視化-口呼吸常習者はムシ歯や歯槽膿漏にかかりやすい.流れの可視化,5(17),86-94,1985