公開日: 2023/11/08
更新日: 2024/09/30
「歯並びが悪い」は、よく使われる表現ですが、一言で歯並びが悪いと言っても、そこには多くの疑問があるはずです。
なぜ歯並びは悪くなるのか。
歯並びが悪いと体にどんな影響を与えるのか。
そして、どうすれば改善できるのか。
本記事では、歯並びの原因や影響、治療方法や費用、日常での注意点など、あらゆる情報を掲載しています。
自分の歯に自信がなく、歯の矯正をお考えの方は、是非チェックしてみてください。
記事の編集・責任者歯科医師高橋涼太先生
千賀デンタルクリニック分倍河原MINANO医院 院長。日本大学歯学部 卒業。
「歯並びが悪い」と言っても、様々な種類があります。 出っ歯や受け口、すきっ歯、叢生など、多くの人が名前は知っているものの、どのような状態を指すかはあまり理解できていないかもしれません。
この章では、代表的な8つの「歯並びが悪い」といわれる状態を解説します。 それぞれの状態により、原因や治療方法、費用が異なるので、自分の歯がどれに該当するのかしっかり確認しましょう。
まず「歯並びが悪い」状態を知る前に、そもそも「綺麗な歯並び」とはどういう状態か? を確認しておきましょう。
・歯の並びが左右対称
・上下で歯の正中が合っている
・歯が重なったり隙間ができたりしていない
・前歯や奥歯の噛み合わせが適切
・上の前歯が下の前歯よりわずかに出ている
これらの条件が揃っていると、見た目も機能も優れた「綺麗な歯並び」と言えるでしょう。 逆に、これらのどれかが達成できていない場合、良くない歯並び=不正咬合と呼ばれます。
「叢生」とは、歯が適切な位置に並ばず、重なったり突き出たりしている状態のこと。 乱杭歯やガチャ歯などと呼ばれることもあります。 --日本人の歯並びでは、もっとも多い歯並びです1)。
画像出典元:不正咬合の種類と実態 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
歯の重なり具合はさまざまで、ほんの少し重なっている場合は軽度です。 しかし2本の歯がほとんど完全に重なり、「二重歯列」となってしまうケースもあります。
上の前歯が通常よりも前方に突き出ている歯並びです。 この状態は、見た目にも特徴としてあらわれやすく、自信を失くす原因にもなりやすいです。
出っ歯には、上のあごが出ている上顎前突症と、下のあごが引っ込んでいる下顎後退症の2タイプあり、後者の場合は顎関節症のリスクも高まります。
下の歯が上の歯を越えて前に出ている、もしくは下あご全体が前に出ている状態を「受け口」といいます。 受け口の人は、上の歯よりも下の歯が前に出ているため、正面から見たときに下の歯が上の歯を覆って見えることが特徴です。
「すきっ歯」とは、歯の間に隙間がある状態です。 本来であれば、隣同士の歯はきっちりと接している状態が理想的ですが、歯の大きさなどの理由により、間が空いてしまうのです。
さらにすきっ歯の位置や大きさによっては、「s」や「sh」の発音に支障が出てしまいます。コミュニケーションにおいてコンプレックスを感じる人もいるでしょう。
「八重歯」とは、歯が二重に生えるか、隣の歯と重なる状態を示します。
とくに前歯で起きやすく、見た目に与える影響が大きいです。あとから生えてきた犬歯が、そのまま八重歯となってしまうケースが多く見られるでしょう。
日本では「かわいい」「愛嬌がある」と捉えられることがありますが、海外ではいい印象を持たれない場合があります。
交叉咬合(クロスバイト)とは、通常上あごの歯が覆うべき下あごの歯が、上あごの歯より前に出ている状態のこと。 1本の歯に起こる場合もあれば、何本もクロスバイトの状態になっていることもあります。
交叉咬合の注意点は、下あごの動きに制限がかかることです。 これにより顎がずれたり、顎関節症のリスクが高くなったりします。
上の前歯が下の前歯を過度に覆う咬み合わせは「過蓋咬合」と呼ばれます。 いわゆる、咬み合わせが深い状態です。
人によっては、正面から見たときに下の前歯が全く見えなかったり、上の前歯の根元に下の前歯があたったりしてしまう場合も。
重度のケースでは、歯だけでなく、上の歯茎にまで影響を与える危険性があります。
「開咬」とは、口を閉じても上下の前歯が触れない状態のこと。 前歯で食べ物を咬むことができないため、奥歯に咬む力が集中して、奥歯の負担が増加します。
また食べ物を前歯で噛み切りにくいため、舌を不自然に使った咀嚼になったり、くちゃくちゃという音が漏れたりすることもあるでしょう。
歯並びが悪くなる原因について、多くの人はあごの形状や歯の大きさなど先天的要因が大きいと思いがちですが、実は生活習慣や口癖、加齢など後天的な影響も大きいのです。
この章では、歯並びの原因を9つし、詳しく解説します。
まずは先天的な要因から解説していきましょう。
個人差はありますが、通常乳歯は20本、永久歯は親知らず以外で28本、親知らずを含めると32本です。
しかし通常より歯の本数が多い場合、歯のスペースが不足し、叢生や出っ歯を引き起こします。
逆に歯の本数が少ないと、スペースに余裕ができて隙間が生じる原因になり、すきっ歯となります。
また、左右で歯の数が違う場合、正中のずれが生じやすいです。
歯の本数が一般的な範囲内であっても、歯の大きさとあごの骨とのバランスが悪いと、歯並びに影響を与えます。
例えばあごのスペースに対して歯が大きい場合、スペースが不足するので、歯が重なったり、前に飛び出たりと叢生や出っ歯になります。 逆に歯が小さい場合は、スペースに余裕ができてすきっ歯になります。
続いて後天的な要因を解説していきましょう。
口呼吸は、あごや舌が正常な位置にない状態が続き、長期的に見て歯並びに悪影響を及ぼします2)。
さらに口呼吸の場合、口腔内の乾燥を引き起こし、口臭の原因にもなります3)。また口元の筋肉がゆるみ、見た目にも影響を与えます。
例えば、片方だけで噛んだり前歯だけで噛んだりする癖があると、よく使う歯に過度な負担がかかります。
また歯を食いしばる、歯ぎしりをするなどの癖も、歯の咬耗や歯並びの乱れを引き起こすでしょう。
親知らずは、あごの成長が終わった後に生えてくるため、もともとある歯を圧迫することがあります。
とくに横向きに生えてくる場合は、隣接する歯に影響を与え、歯並びが乱れるリスクもあるでしょう。
虫歯や歯周病も、歯並びに悪影響を及ぼします。 虫歯によって片方での噛み癖がついたり、歯周病によって歯茎が弱って歯が動いたりすることで、歯並びの変化に繋がるのです。
さらに虫歯や歯周病で歯が失われた場合は、周りの歯が動いたり倒れ込んだりして歯並びが乱れてしまいます
頬杖をつく、舌で歯の隙間を押す、指しゃぶりや爪噛みなど、日常生活での癖も歯並びが悪化する原因となります。
特に子どもの場合、癖によって、骨格が正しく成長できないこともあります。 子どもの癖に早めに気づき、まずは歯科医院へ相談することが重要です。
加齢によって口元の筋力が低下したり、歯が削れてきたりすると、かみ合わせが変化します。 その結果、歯に加わる力も変化し、歯並びも変わっていきます。
矯正治療の失敗によって、逆に歯並びが悪化してしまう場合があります。 途中で矯正をやめたり、無理な動かし方をしたりすると、悪影響を及ぼす可能性があるのです。 (参考:公益社団法人日本臨床矯正歯科医会)
また矯正治療後の保定が不十分だと、再び歯並びが乱れるリスクも高まります。 矯正治療を終えた後も、維持のため気にかける必要があるでしょう。
この章では、歯並びの乱れがもたらす6つの影響とリスクについて詳しく解説していきましょう。
歯並びの乱れは見た目だけでなく、食事の困難や消化器系への負担など、体の健康に関するリスクにもつながります。 また発音が不明瞭になるなど、日常生活のコミュニケーションにも影響するでしょう。
歯並びが乱れていると、食べ物の咀嚼や、唾液の分泌に影響を与えます。
咬み合わせがずれていると、食物をうまく咬み砕くことができません。
また唾液は消化酵素を含んでおり、初期消化に重要な役割を果たしますが、分泌が不十分だと食べ物の分解に影響を与えるでしょう。
その結果、腸への負担が増加、さらに栄養素の吸収も低下する可能性があります。
歯が重なっていることで歯と歯の間に食べ物の残りや汚れが溜まりやすくなり、これが口臭や虫歯の原因となります4)。
さらに歯に隙間があったり口呼吸だったりすることでドライマウスを引き起こし、口が乾燥して口臭や歯周病のリスクが上がります3)。
口内環境の悪化は、全身の健康にも影響を与える場合があり、心臓病や糖尿病のリスクも高まる5)6)ので、注意が必要です。
歯並びの影響により、舌の動きが制限され、発音に悪くなることがあります。
とくに大きなすきっ歯や出っ歯の場合、サ行などの発音が難しくなることが多いです7)。 プレゼンテーションや面接など、発音が重要な場面でのパフォーマンスにも影響を与えるかもしれません。
出っ歯はいろいろな歯並びの中で、もっとも外傷が多い(歯をぶつけやすい)歯並びです8)。歯が傷つくとその部分が虫歯になりやすくなるため、1度傷ついた歯は次々と問題を引き起こすことも。
また歯並びが悪いと、歯に不均等な負荷がかかります。その結果歯が早く削れてしまい、長期的には歯の健康を大きく損なうリスクもあります。
歯並びの乱れにより、巡り巡って全身のバランスにも悪影響を及ぼすことになります。
例えば歯の噛み合わせが悪い場合、日常的にあごに負担をかけることにつながり、結果的に顎関節症を引き起こす場合が。
またあごが疲れたり痛くなったりすると、それが肩や首にも影響を与え、長期的には頭痛などの問題にもつながることもあります。
歯並びが悪いと、人前で自由に笑えなかったり、口元を手で隠してしまったりすることがあります。これが自信を失う原因となる場合もあるでしょう。
歯並びを治療することで、笑顔が自然になり、コミュニケーションがスムーズになるケースも多く見られます。 歯並びの改善は、見た目だけでなく心の健康にも寄与するといえるでしょう。
歯並びの問題を感じた際、多くの人が「治療方法は?」や「費用はどれくらい?」と気になるはず。
治療のアプローチやコストは、歯の状態や種類によって異なります。 さらに治療法ごとに利点や欠点が存在するため、自分の生活スタイルや予算に合わせた選択が必要です。
この章では、歯並びの矯正方法、それに伴う費用、そして各方法の長所・短所について詳しく説明します。
治療を受ける前に、それぞれの情報を十分に理解し、自分に最適な療法を選びましょう。
ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを使用して歯を動かす一般的な方法です。 費用としては大体70〜150万円程度が一般的ですが、クリニックや症状によってはこれ以上かかる場合もあります。
メリットは、多くの歯並び問題に対応可能な点。出っ歯、受け口、すきっ歯、叢生など、多くの症状に適用可能です。
デメリットは、装置が目立ち、見た目にコンプレックスが生じやすいことでしょう。装置にによって歯みがきがし辛くなるため、虫歯になる可能性もあります。 治療中の痛みも強く、定期的な調整が必要となるため、1か月に1回以上の頻繁な通院が必要です。
マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置を使用して歯を動かす矯正方法です。 費用は一般的に30〜100万円程度と、ワイヤー矯正に比べると安いことが多いです。
メリットは、見た目が自然で目立たないため、外見を気にする人にはおすすめです。 また取り外しが可能なので、食事や歯磨きがしやすい利点もあります。
デメリットとしては矯正力が弱いため、抜歯矯正など歯の移動量が大きい場合には不向きです。 また定期的にマウスピースを交換するので、自己管理が非常に重要となります。
対応可能な歯並びは、軽度から中程度の出っ歯、すきっ歯、叢生などです。
重度のケースや、あごの骨格に問題がある場合は、マウスピースでは対応が難しい場合があります。
そのようなケースでは、歯科医としっかり相談し、他の矯正方法との組み合わせも考慮することが重要です。
外科矯正は、あごの骨の手術を併用してかみ合わせを改善する治療法です。
場合によっては手術に健康保険が適用される場合もあるため、詳しくは歯科医院に相談してみましょう。
メリットは、重度の歯並びやあごの骨格に問題があるケースでも対応可能という点。
これにより、他の矯正方法では解決できないようなケースでも、効果的な治療が可能になります。
デメリットは、外科的な手術が必要なためリスクが高いこと、そして回復期間も長いという点です。数週間の入院が必要となることも多いため、リスクと費用、期間を総合的に考慮して治療方法を選びましょう。
セラミック治療は、天然歯と似た色・質感のセラミックの被せ物で歯並びを治す治療法。
費用は歯1本あたり5~15万円程度と少々高めですが、その分、見た目が自然で、金属アレルギーの心配も少ないのが特徴です。
しかしセラミックは割れやすい材料であるため、強い噛み合わせの力がかかる場所には不向きです。
またセラミック治療を施すには、歯を削る必要があります。削った上に、セラミックを被せるからです。 健康な歯を痛めたり、寿命を縮めたりすることに繋がるため、あまり推奨されない治療方法でしょう。
口腔筋機能療法は、口周りの筋肉を改善するトレーニングです9)。
メリットは手術や装置が不要で、自然な方法で歯並びや口元の問題を改善できる点。 副作用はほぼありません。
デメリットは子供では非常に効果的ですが、大人ではなかなか効果が出ないこと。 トレーニングは継続が必要であり、自分自身で管理する必要があります。
対応可能な歯並びは、舌突出癖や口呼吸が原因となる歯並びです。
日々の生活習慣は、歯並びにも影響を与える重要な要素です。 口呼吸や頬杖、噛み癖などの習慣を見直すことで、歯並びの悪化を防ぐことができます。
特に子どもには、指しゃぶりをやめさせる、歯応えのある食べ物を与えるなどの工夫が大切です。
メリットとしては、手軽に始められる点と、全身の健康にも良い影響を与える可能性がある点でしょう。 デメリットは、習慣を変えるのが難しく、効果が出るまでに時間がかかる可能性がある点です。
歯並びを治すためには、適切なクリニックを選ぶことが欠かせません。 しかしクリニック選びは一筋縄ではいかないもの。
治療方針や費用、立地条件など、考慮すべきポイントは多々あります。 とくに矯正治療は長期間にわたることが多いため、信頼できるクリニックを選ぶことが重要です。
この章では、クリニック選びの基準となるポイントを詳しく紹介します。
選ぶクリニックによって、治療の成功率が変わることもあるので、しっかりと情報を収集しましょう。 目星をつけたクリニックがあれば、まずはカウンセリングだけでも予約して、自分の状態を確認することをおすすめします。
矯正歯科クリニック選びでもっとも重要なのは、クリニックや歯科医師の方針を確認することです。
各クリニックには、抜歯を避ける、見た目を重視する、短期での治療を目指すなどの特色があります。
事前にしっかりと調査して、自分の希望に合ったクリニックを選びましょう。
矯正治療は通常、数ヶ月から数年という長期間にわたります。 そのため、通院のしやすさも重要な要素となります。
自宅や職場から近い、または交通の便が良い場所にあるクリニックを選ぶことで、治療期間中のストレスを軽減できるでしょう。 また開院時間なども自分のライフスタイルに合った、通いやすいクリニックを選ぶことをおすすめします。
矯正治療は長期間にわたることが多く、その間にはさまざまな疑問や悩みが出てくることがあります。 そのため、信頼できるクリニックを選びたいものです。
おすすめできるのは、メリットだけでなくデメリットもしっかりと説明してくれ、親身に相談に乗ってくれるクリニック。 治療の進行や費用についても、明確に説明してくれるクリニックを選ぶことで、安心して治療を受けられます。
矯正歯科クリニックを選ぶ際には、実際に治療を受けた人の評判も重要です。 評価や口コミ、症例などを参考にして、クリニックの信頼性や成功例を確認しましょう。
過去に自分の歯並びと同じような症状で完治したケースがあるクリニックは、治療成功の確率が高いといえます。
本記事では「歯並びが悪い」という問題にまつわる様々な疑問について解説しました。 歯並びの種類、原因、影響・リスク、治し方、費用、そしてクリニックの選び方まで、理解が深まったでしょうか?
費用が気になる方が多いと思いますが、最近は手頃な矯正方法も増えています。
この記事が、あなたの歯並びに対する理解を深めるきっかけとなり、次の一歩を踏み出す勇気を与えることができれば幸いです。
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この記事の参考文献
1)厚生労働省:平成28年歯科疾患実態調査結果の概要
2)進藤由紀子:小学生における歯列・咬合と口呼吸との関連性について. 小児歯科学雑誌, 47(1),59−72,2009
3)石川純ほか:口腔内の気流の可視化-口呼吸常習者はムシ歯や歯槽膿漏にかかりやすい.流れの可視化,5(17),86-94,1985
4)佐藤 義高:成人における不正咬合と口腔衛生状態, 齲蝕, 歯周疾患および体位との関係について,口腔衛生学会雑誌,23巻2号 p.73-94,1973
5)一般社団法人日本循環器学会:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)
6)一般社団法人日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019
7)M. ZHANGほか:The impact of malocclusion and its treatment on quality of life: a literature review. INTERNATIONAL JOURNAL OF PAEDIATRIC DENTISTRY, 16(6),381-387,2006
8)QV Nguyenほか:A systematic review of the relationship between overjet size and traumatic dental injuries. European Journal of Orthodontics, 21(5), 503–515,1999
9)日本口腔筋機能療法学会