公開日: 2023/12/02
更新日: 2024/09/30
歯列矯正と一口にいってもさまざまな方法が存在し、矯正方法によってメリット・デメリットが異なります。
本記事では、多種多様な矯正方法を1つ1つ詳しく解説。
ワイヤー矯正からマウスピース、さらには外科手術に至るまで、幅広い選択肢を網羅的に紹介するので、ぜひ最適な矯正方法を見つけるのに役立ててください。
記事の編集・責任者歯科医師高橋涼太先生
千賀デンタルクリニック分倍河原MINANO医院 院長。日本大学歯学部 卒業。
ワイヤー矯正には、表側矯正、裏側矯正、ハーフリンガル矯正があります。順番に特徴を説明していきます。
歯の表面に金属製のメタルブラケットを取り付け、ワイヤーで歯を動かす一般的な方法です。
・金属素材を使用しているため、耐久性が非常に高く、日常生活でのダメージにも強い
・セラミック(審美)ブラケットと比べると安い
・多くの症例に適用できる
・発音のトラブルが起こらない
・笑う時や口を開けた時に金属製のブラケットが目立つ
・金属アレルギーの人は口腔内の不快感や全身のアレルギー症状が生じる可能性がある
・唇や頬に口内炎ができやすい
金属ブラケットの見た目をそれほど気にしない場合には、非常に良い選択肢といえるでしょう。
表側矯正でも、金属の器具ではなくセラミックやプラスチック、クリアブラケットなど、目立ちにくい素材を使用する方法があります。
・歯の色に近い素材を使用しているので目立ちにくい
・ブラケットは汚れや着色、変色に強く、白い見た目が長持ちする
・金属アレルギーのリスクが低い
・発音のトラブルが起こらない
・金属素材と比べて強度が劣り、割れたり壊れたりすることがある
・メタルブラケットと比較して費用が高くなりやすい
・唇や頬に口内炎ができやすい
基本的な矯正の流れは金属ブラケットと変わらず、ほとんどの症例に適応できます。
裏側矯正は歯の裏面にブラケットとワイヤーを取り付けることで、矯正装置が外からほとんど見えない矯正方法です。
・歯の裏側に装置をつけるため目立たない
・唾液が多く分泌されるようになり、虫歯のリスクが低くなる
・器具が舌の動きを制限するため、舌の癖が改善される
・唇に口内炎ができない
・他の矯正方法と比べて歯の移動に時間がかかり、矯正期間が長い
・歯ブラシの先が届きづらくなり、歯磨きが難しくなる
・他の方法と比べて費用が高額になる
・舌に口内炎ができやすい
・発音がしづらくなる1)
ハーフリンガル矯正は、上あごの歯に裏側矯正、下あごの歯にワイヤー矯正を取り付ける矯正方法です。
・上あごの装置は歯の裏側につけるため目立ちにくい
・裏側矯正と比べると、治療費を抑えることができる
・上あごの歯の裏側にしか装置をつけないため、舌の不快感が軽減される。
・下の歯が見えてしまうと装置が目立ってしまう
・上の歯の歯磨きは難しい
・発音がしづらくなる1)
・噛み合わせの状態によってはハーフリンガル矯正が適用できないこともある
費用は通常の裏側矯正よりも抑えられる傾向にあるので、見た目とコストのバランスを取りたい人に適した選択肢です。
マウスピース矯正は、透明で薄いマウスピース型の装置を使用して歯を動かす矯正方法です。
この方法ではワイヤーやブラケットを使用しないため、非常に目立ちにくいという特徴があります。
マウスピース矯正では、治療過程で形状が異なるマウスピースを順番に装着し、一定期間ごとに交換することで、徐々に理想の歯並びに近づけていきます。
・最終的な歯並びをシミュレーションし確認できる
・治療の進行状況を確認できる
・取り外し可能な上、透明で目立たない
・ワイヤー矯正と比べて、異物感や違和感、痛みが少ない2)
・金属アレルギーの心配がない
・いつも通り歯磨きできる
・1日に20時間以上装着しなければならない
・食事や歯磨きの際には取り外す必要がある
・重度の歯並びの問題や顎の変形などはワイヤー矯正との併用が必要な場合がある
・慣れるまでサ行とザ行が発音しづらい3)
部分矯正は、全体的な歯並びや噛み合わせの治療ではなく、問題がある部分だけを対象とする矯正方法です。
通常の矯正治療が歯列全体を動かし、歯並びや噛み合わせを全体的に改善するのに対し、部分矯正は、気になる部分だけを治療することを目的とします。
ただし部分矯正が適用できるかどうかは、歯の状態によって異なります。
・ほとんどの場合で費用が安く、治療期間も短い
・通院回数が少なくて済むため、忙しい方にも便利
・一部のみしか歯を動かさないため、痛みが少ない
このように、部分矯正は心理的にも始めやすい治療法といえます。
矯正治療は大がかりなイメージがあり、なかなか一歩を踏み出せない人も多いですが、費用が安く、治療期間が短く、痛みも少ない部分矯正は、「試してみようかな」と思いやすい治療法でしょう。
・全体的な噛み合わせの改善にはならない
・治療が適用できるケースが限定されている
・「IPR」という歯を削る処置が必要な場合もある
・Eラインの改善といった顔の大きな変化は期待できない
外科手術を伴う矯正治療は、歯並びだけでなく、あごの骨格に問題がある場合に適用されます。 顎関節症や重度の噛み合わせの問題を持つ人に有効で、手術によってあごの位置や大きさを調整し、その後の矯正治療で歯並びを整えます。
・根本的な骨格の問題を解決できる
・保険の適用対象となることがあり、治療費の負担が軽減される
・骨格そのものを改善するため、顔の輪郭や横顔の確実な改善が期待できる
・外科手術のため様々なリスクあり、回復期間や入院期間も長い
・手術の全身麻酔で、吐き気や寒気といった合併症が起きる可能性がある
・下あごの損傷によって感覚神経に障害が生じ、知覚麻痺が残る場合がある
セラミック矯正は、歯を削った上から歯の色に近いセラミック素材を被せる矯正方法です。 問題がある歯を削り、その上にセラミックで作られた人工歯を被せて歯並びを整えます。
ほかの矯正方法と異なるのが、セラミック矯正では実際には歯を動かさないという点です。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正のように歯を物理的に移動させるのではなく、見た目だけを調整します。
そのため矯正治療ではなく、主に歯の色や形、大きさなど見た目の改善に焦点をあてた審美治療といえるでしょう。
・歯を削ってカバーを被せるだけなので、治療期間が短い
・矯正装置を使わないので、治療中の見た目が気にならない
・歯を動かさないので歯を動かす痛みや違和感がない
・治療期間が短いため通院回数も少なく済む
・治療後に歯がもとに戻るリスクもないため、保定処置も不要
・セラミッククラウンを被せるためには、健康な歯でも削らなければならない
・歯を削る際に歯髄が露出する可能性があり、神経を抜く処置が必要になることがある
・歯の寿命が短くなる
・被せた部分と土台の間の段差に汚れがたまり、虫歯や歯周病のリスクがある
・咬み合わせは改善できない
・歯並びや咬み合わせの根本的な原因は解決できない
最後にセラミックの被せ物は、交換が必要になった場合、初回とほぼ同じ金額がかかります。 初期費用はほかの矯正方法よりもおさえられることが多いですが、長期的な維持にかかるコストを考慮する必要があるでしょう。
インプラント矯正は、あごの骨にミニインプラントという小さいネジ(歯科矯正用アンカースクリュー)を埋め込む方法です。 ミニインプラントは直径が1.4~2mm、長さが6~10mmで、非常に小さく痛みも少ないです。 誤解されやすいですが、一般的なインプラントとは全く異なり、ワイヤー矯正やマウスピース矯正の補助として使用します。
・動かしたい歯だけに効率よく力を伝えることができるため、矯正期間が短くなる4)
・動かしたくない歯には無理な力が加わらず、従来の矯正治療では難しかった歯並びも解決可能4)
・抜歯をせずに治療可能な症例が増える
・ネジが、緩んだり抜けたりすることがある4)
・ネジによって歯の根が吸収されることがある
・ネジ周りに歯垢や汚れが溜まると細菌が繁殖し、歯茎の腫れや出血することがある4)
・ネジが脱落した場合打ち直しが必要になる4)
・通常の矯正治療に加えて追加費用が発生する
矯正治療における補助装置には、拡大床装置、顎間ゴム、IPR(歯間削合)などがあります。
特に子どもの矯正治療で用いられることが多く、口腔内のスペースが足りない上あごを広げるのに役立ちます。これにより、歯並びの改善に必要なスペースを作り出すことで抜歯を避けることができる場合もあります。
上下の歯の噛み合わせを改善するために使用されます。ゴムを上の歯と下の歯それぞれにかけて、歯や咬み合わせの位置を調整します。
顎間ゴムは、患者自身でゴムの交換をする必要があります。
隣接する歯の間をわずかに削り、スペースを作る方法です。 削るといっても0.2〜0.5mm程度で、歯にはほとんど悪影響を与えません。
これらの補助装置は矯正治療の効果を高め、治療期間を短縮することができます。
子どもの歯並びの治療に、日中1時間程度+就寝時に装着するマウスピースが用いられることがあります。
マウスピースは成長途中の子どもの口腔内環境に合わせて調整され、これから生えてくる歯の位置や向きを調整するのに役立ちます。
・取り外しが可能なため、食事や歯磨きに支障がない
・子どもが日中マウスピースを気にせず自由に過ごせる
・歯並びの原因となる筋肉のバランスを根本から整えることができる
・口元が引き締まる
・矯正治療終了後の後戻りの可能性が低くなる
・ワイヤー矯正など他の方法に比べて安い
・子供のモチベーションを保つために親のサポートが必須
・使用時間が短いと効果が弱い
・子どもの成長に合わせて、マウスピースの調整が必要
口腔筋機能療法とは、口腔周囲にある筋肉の機能を正常化することで、歯並びや噛み合わせの問題を改善する矯正方法です。
この治療では、舌の使い方、嚥下方法、口呼吸の改善などの改善が見込まれます。
・矯正装置を使わずに歯並びを改善できる
・装置に比べて費用が非常に安い
・良くない舌の癖や口呼吸が原因の歯並びに特に効果的
・子どもの成長期にも有効
・患者の積極的な協力と日常生活での継続的な訓練が必要
・効果を実感するまでに時間がかかる
・大人の場合、効果が期待できない場合が多い
本記事では、さまざまな歯列矯正方法について詳しく紹介してきました。
歯列矯正は単独の方法だけではなく、複数の方法を組み合わせて行われることもあります。例えばワイヤー矯正と補助装置を併用することで、より効果的な治療ができる場合が多いです。
どの矯正方法をどのように組み合わせるかは、患者さんの歯並びや噛み合わせの状態によって異なります。
最適な矯正計画を立てるためには、専門のクリニックでの相談が不可欠です。自分に最適な方法を見つけるために、まずは歯科クリニックに相談してみましょう。
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