公開日: 2023/12/05
更新日: 2024/09/30
「歯列矯正を考えているけれど、本当に必要?」ネットを見ると、痛みやリスク、長い治療期間といった歯列矯正に関するネガティブな情報が溢れています。
ここでは歯列矯正に関する一般的な誤解を解き明かし、歯列矯正をやめた方が良いとされる理由、歯列矯正を行うべき人の特徴などについて解説します。本記事を読んで、歯列矯正についての疑問を解消し、歯列矯正の際の参考にしてください。
記事の編集・責任者歯科医師高橋涼太先生
千賀デンタルクリニック分倍河原MINANO医院 院長。日本大学歯学部 卒業。
歯列矯正をやめたほうがいいとされる理由には、いくつかのリスクが関係しています。
ここでは歯列矯正のデメリットを挙げていきますので順を追って確認していきましょう。
歯肉退縮は、歯茎が下がってしまう現象です。矯正治療によって歯茎が下がると、歯の根が露出して「冷たいものがしみる」ようになることがあります。
ブラックトライアングルとは、歯と歯の間にできる黒い三角形の空間を指します。見た目の問題だけでなく、食べ物が詰まりやすくもなります。
歯根吸収とは、強い矯正力によって歯の根っこが溶けて、短くなる現象です。歯根吸収で歯の根が短くなると、歯が動揺しやすくなります。
歯の神経に強い矯正力が加わると、歯の神経に炎症(歯髄炎)が生じ、冷たいものや熱いものがしみる知覚過敏が起こることがあります。
症状が悪化すると歯の神経が壊死し(失活)し、歯が変色します。こうなると、根管治療が必要となります。
歯列矯正は、美しい歯並びや改善された噛み合わせになる一方で、その治療期間の長さがデメリットです。
部分矯正で数か月~1年、全体矯正で約1~3年という長期にわたる治療は、歯列矯正を受ける人にとって大きな負担となります。
特に、歯列矯正中は虫歯や歯周病になりやすいため、通常よりも念入りなケアが求められます。
このような長期間にわたる治療とケアの必要性は、歯列矯正をためらう理由の一つとなるでしょう。
特にワイヤー矯正では、装置が取り外せないため食べ物が挟まりやすく、適切なブラッシングが難しくなります。これにより、虫歯のリスクが高まるのです。
マウスピース矯正の場合お手入れは簡単ですが、十分な歯磨きが行われていないと、マウスピース装着時に汚れが付着したままになり、同様に虫歯のリスクが増加します。
矯正中の痛みは、矯正装置を取り付けて歯を少しずつ動かしていく過程で生じます。
治療中の痛みは、装置の調整後から2~3日程度続くことが一般的で、この期間は特に不快感を感じやすいでしょう。
多少の痛みは、歯列矯正で避けられないものです。特に、痛みに敏感な方や、日常生活において痛みを避けたい方にとっては、大きな懸念材料となるでしょう。
上下の歯が正しく噛み合わない状態を不正咬合と言います。
歯並びが悪いと、噛み合わせが不均衡になり、顎関節や筋肉に負担がかかります。これが、頭痛や肩こりへとつながる場合があります。
歯列矯正によって噛み合わせを改善することで、症状の軽減が期待できます。
前歯で物が噛み切れない状態では、前歯が正常に咬合(かみ合わせ)していません。
消化不良の原因にもなるので、歯列矯正を行うことで食事の質が向上するかもしれません。
歯並びが悪いと、歯ブラシが届きにくい箇所も生まれ、磨き残しが発生しやすくなります。 歯列矯正により歯並びを整えることで、歯磨きがしやすくなり、口腔衛生の向上が期待できます。
矯正装置が食べ物の残りやすい場所になるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。 日常の歯磨きやマウスピースの清掃が面倒だと感じる人は、矯正治療に向いていません。矯正中は、通常よりも念入りなブラッシングや定期的な歯科クリーニングが必要になります。
既に虫歯や歯周病が進行している場合、歯列矯正を行う前に治療が優先されます。歯の状態が良くない場合、矯正治療そのものが不可能な場合もありますので、まずは基本的な歯の健康を回復させることが重要です。
歯列矯正は長期間にわたり、定期的な診察や調整が必要です。治療期間は通常1年から数年に及びます。
決まった期間歯医者に通うことができない人は、歯列矯正中の定期的なメンテナンスや自宅でのケアが必須であるにもかかわらず、継続することが難しいかもしれません。
治療結果も不十分になる可能性が高いため、矯正治療はおすすめできません。
歯列矯正治療によって歯並びが改善されると、虫歯や歯周病のリスクが減少します。 なぜなら歯が正しく並ぶことで、歯ブラシが届きにくい隙間や歯垢がたまりやすい部分が減るためです。
不揃いな歯並びや噛み合わせの問題は、自信の欠如につながることがあります。
日本臨床矯正歯科医会の調査結果では、46.2%と約2人に1人が「歯並びに自信がない」と回答しています。また、25.9%と約4人に1人が「歯を見せて笑うことに抵抗を感じる」と回答しています。1)。
治療後の自信あふれる笑顔は、社会生活や人間関係にも好影響を与えるでしょう。
自分のお子さんの歯並びは悪いと歯科矯正をさせたほうがいいのか、させないほうがいいのか、疑問に思う人も多いはずです。
そこで次では、子供の時に歯科矯正をすることのメリット、デメリットを紹介します。
子供の歯列矯正には、多くのメリットがあります。それぞれ確認していきましょう
子供の顎骨は柔らかく、成長途中であるため、矯正治療が大人よりもスムーズに進むことが一般的です。歯並びが整うことで、噛み合わせが改善され、将来的な歯の健康に影響します。
子供の頃に矯正治療を行うことで、歯のクリーニングが容易になり、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。子供時代に矯正治療を受けることは、長期的な口腔健康の基盤を築く上で非常に大切です。
子供の歯列矯正のデメリットには、いくつかの点が挙げられます。
矯正装置を付けることによって、虫歯になるリスクが高まりす。特に子供は、歯磨きが不十分なことが多く、保護者や歯科医院の長期的なサポートが必要です。
治療が難しいケースや後戻りが生じたケースでは、大人になっても再度矯正治療が必要になることがあります。また、長期間の治療に子供が協力的でない場合、良い結果が得られにくいでしょう。
矯正治療中は歯にワイヤーなどの目立つ装置を装着するため、一時的に見た目が悪くなります。 特に思春期の子供では、他人からの見え方を気にしするため、注意が必要です。
これらを踏まえると、子供の歯科矯正は大変かもしれませんが、将来の歯のことを考えると歯科矯正は子供のうちにする方がよいでしょう。
本記事では、歯列矯正はやめた方が良いのか?した方が良いのか?という疑問について詳しく説明しました。
歯列矯正が必ずしも全員に適しているわけではありません。しかし、歯並びを整えることで見た目はもちろん多くのメリットがあります。
本記事を通じて、歯列矯正に関する正しい知識を得ることで、自分や家族のための最適な決断ができるようになるでしょう。
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