水分活性型矯正用接着剤の臨床評価:ランダム化比較試験による検討

水分活性型矯正用接着剤の臨床評価:ランダム化比較試験による検討

In vivo evaluation of a moisture-activated orthodontic adhesive: a comparative clinical trial.

著者A Karamouzos, A Mavropoulos, A E Athanasiou, G Kolokithas
掲載誌Orthodontics & craniofacial research
掲載日2002年11月
矯正歯科
ブラケット矯正比較研究治療期間

要旨

本研究は、水分活性型エチルシアノアクリレート接着剤と従来のコンポジットレジン接着剤の臨床成績を比較することを目的として実施された。25名の患者(計429歯)を対象に、スプリットマウスデザインを用いたランダム化比較試験を行い、9ヶ月間のブラケット脱離率を評価した。結果、水分活性型接着剤の脱離率は22.4%であり、コンポジットレジンの5.1%と比較して有意に高かった(p < 0.001)。特に小臼歯部で脱離が多く、主な破折様式は接着材内部での凝集破壊であった。本研究の結果から、水分活性型接着剤を臨床で信頼できる選択肢とするには、物性のさらなる改良が必要であることが示唆された。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

大学の矯正科で行われたランダム化比較試験(RCT)です。25名の患者さん(女性15名、男性10名)を対象に、合計429本の歯(大臼歯を除く)にブラケットを装着しました。左右で異なる接着剤を使用する「スプリットマウス法」を用い、9ヶ月間にわたってブラケットが外れないかどうかを追跡調査しました。

🦷 使った装置・方法

水分で固まる性質を持つ「エチルシアノアクリレート系接着剤」と、一般的に使われる「コンポジットレジン系接着剤」の2種類を使用し、ステンレス製ブラケットを直接ボンディングしました。

📏 何を測った?

装着から9ヶ月間のブラケット脱離率を記録し、生存率曲線を解析しました。また、外れた際の接着剤の残り方をARI(Adhesive Remnant Index:接着剤残留指数)を用いて評価しました。

📊 主な結果

  • 水分活性型接着剤の脱離率は22.4%であり、コンポジットレジンの5.1%に比べて明らかに高い数値を示しました(p < 0.001)。
  • 統計解析の結果、2つの接着剤の間にはブラケットの維持力において有意な差が認められました。
  • 歯種別では、切歯や犬歯に比べて小臼歯の方がブラケットが外れやすい傾向がありました(p < 0.001)。
  • ブラケットが外れる際の主な原因は、接着剤そのものの内部で壊れる「凝集破壊」でした。

💡 臨床で使えるポイント

水分で硬化する接着剤は、防湿が難しい症例での利便性が期待されますが、本研究の結果では従来のレジンに比べ脱離リスクが約4倍も高いことが示されました。特に咬合力がかかりやすい小臼歯部では脱離が多いため注意が必要です。現段階では、確実な接着を優先するなら、手間はかかっても従来のコンポジットレジンを選択するのが最も安全な選択と言えます。