顎関節症(TMD)治療における固定式矯正装置の活用:口腔内スプリントの代替としての可能性

顎関節症(TMD)治療における固定式矯正装置の活用:口腔内スプリントの代替としての可能性

Fixed orthodontic therapy in temporomandibular disorder (TMD) treatment: an alternative to intraoral splint.

著者Simona Tecco, Stefano Teté, Vito Crincoli, Mario Armando Festa, Felice Festa
掲載誌Cranio : the journal of craniomandibular practice
掲載日2010年3月
矯正歯科
ブラケット矯正顎矯正比較研究成人矯正治療期間

要旨

本研究は、顎関節症(TMD)の治療において、固定式矯正装置が口腔内スプリントの代替となり得るかを評価することを目的として実施された。復位性関節円板前方転位を有する成人患者50名を、前方再位(AR:Anterior Repositioning)スプリント群(20名)、固定式矯正装置群(20名)、未治療の対照群(10名)に分類した。6ヶ月間にわたり、関節痛、関節雑音、筋肉痛、および自覚的な症状緩和を毎月評価した。その結果、スプリント群と固定式矯正装置群の両方で、関節痛(T2以降、p < 0.01)および筋肉痛(T1以降、p < 0.01)の有意な減少が認められた。本研究により、固定式矯正装置は短期間の臨床結果において、関節痛および筋肉痛の緩和にスプリントと同等の効果を示すことが示唆された。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

復位性関節円板前方転位(口を開ける時に音が鳴るタイプの顎関節症)と診断された成人患者50名を対象とした比較研究です。患者さんを、ARスプリント(前方再位型マウスピース)を使うグループ(20名)、固定式のマルチブラケット装置で矯正治療を行うグループ(20名)、何もしないグループ(10名)の3つに分けました。治療開始から6ヶ月間、毎月経過を追い、症状の変化を詳しく調査しています。

🦷 使った装置・方法

上顎に装着するARスプリント(下顎を前方へ誘導するタイプ)と、一般的な固定式のマルチブラケット矯正装置を使用しました。

📏 何を測った?

顎関節の痛み、関節の音(クリック音)、咀嚼筋の痛み、および装置に対する違和感や不快感の程度を評価しました。

📊 主な結果

  • ARスプリント群と固定式矯正装置群の両方で、関節の痛みは治療開始2ヶ月後(T2)から、筋肉の痛みは1ヶ月後(T1)から、6ヶ月目(T6)にかけて有意に減少しました(p < 0.01)。
  • 関節の音(クリック音)の減少頻度については、ARスプリント群の方が固定式矯正装置群よりも有意に高い改善効果を示しました(p < 0.05)。
  • 装置の不快感については、治療初期(2〜3ヶ月目)は固定式矯正装置の方が少なかった(p < 0.05)のですが、5〜6ヶ月目になるとスプリントの方が不快感が少ないという逆転現象が起きました。
  • 未治療のグループでは、観察期間中に症状の有意な改善は見られませんでした。

💡 臨床で使えるポイント

顎関節の痛みや筋肉の痛みを主訴とする患者さんに対して、固定式矯正装置によるアプローチは、短期的にはスプリント療法と同等の除痛効果が期待できます。ただし、クリック音の消失を優先的に目的とする場合は、スプリント療法の方が適しています。治療初期は矯正装置の方が患者さんに受け入れられやすいですが、半年ほど経過するとスプリントの方が違和感が少なくなる傾向があるため、事前のインフォームドコンセントに活かせるでしょう。