固定式矯正装置による治療後の天然歯の色調変化:前向き臨床試験

固定式矯正装置による治療後の天然歯の色調変化:前向き臨床試験

Tooth-color assessment after orthodontic treatment: a prospective clinical trial.

著者Andreas Karamouzos, Athanasios E Athanasiou, Moschos A Papadopoulos, George Kolokithas
掲載誌American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics
掲載日2010年12月
矯正歯科
ブラケット矯正審美比較研究成人矯正

要旨

本研究は、固定式矯正装置を用いた治療に伴う天然歯の生体内での色調変化を評価することを目的として実施された。26名の患者を対象に、化学重合型または光重合型レジンを用いてブラケットを装着するスプリットマウスデザインの前向き臨床試験を行った。分光光度計を用いて、ブラケット装着前と除去・清掃後の歯面の色調パラメータ(L*、a*、b*)を測定した。その結果、治療後に明度(L*)は低下し、赤み(a*)と黄色み(b*)は有意に増加した(p < 0.001)。色差(ΔE)は2.12〜3.61の範囲であり、化学重合型レジンは光重合型よりも大きな色調変化を示した。本結果は、矯正治療が歯の審美性に影響を及ぼす可能性を示唆している。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、固定式の矯正装置をつけた後に、歯の色がどのように変わるかを調べた前向き臨床試験です。26名の連続した患者さんを対象に、左右で異なる接着剤(化学重合型と光重合型)を使用する「スプリットマウスデザイン」という手法で比較を行いました。対象となったのは、上下顎の全歯(ブラケットを装着した歯)です。装置をつける前と、装置を外してクリーニングした後の2つのタイミングで、歯の表面の色を精密に測定しました。

🦷 使った装置・方法

固定式のブラケット装置を使用し、接着剤として「化学重合型レジン」と「光重合型レジン」の2種類を使い分けました。分光光度計という専門の機械を使い、歯の表面の決まった範囲の色を数値化して記録しました。

📏 何を測った?

国際的な色の基準であるCIE Lab*表色系を用いて、明度(明るさ)、赤み、黄色みを測定しました。また、治療前後での色の変化の度合いを示す「色差(ΔE)」を算出しました。

📊 主な結果

  • 矯正治療後、すべての歯で明度(L*)が有意に低下し、歯が少し暗くなる傾向が認められました(p < 0.001)。
  • 赤み(a*)と黄色み(b*)の値は有意に増加し、治療前よりも色が濃くなる変化が見られました(p < 0.001)。
  • 歯の種類による平均的な色差(ΔE)は2.12から3.61の範囲であり、これは肉眼でも色の違いが認識できるレベルの変化を含んでいます。
  • 接着剤の種類を比較すると、化学重合型レジンを使用した部位の方が、光重合型レジンよりも色調の変化が大きくなっていました。

💡 臨床で使えるポイント

矯正治療後は、装置を外した直後でも歯の明度が下がり、わずかに黄色っぽく変化することを事前に患者さんへ説明しておくとトラブルを防げます。特に化学重合型レジンは色への影響が大きいため、審美性を重視する場合は光重合型を選択するのが賢明です。治療後のホワイトニングの提案も、患者満足度を高める有効な手段となるでしょう。