サーモフォーミング後および口腔内使用10日後におけるマウスピース型矯正装置の厚み変化:前向き臨床研究

サーモフォーミング後および口腔内使用10日後におけるマウスピース型矯正装置の厚み変化:前向き臨床研究

Thickness of orthodontic clear aligners after thermoforming and after 10 days of intraoral exposure: a prospective clinical study.

著者Rosaria Bucci, Roberto Rongo, Carmine Levatè, Ambrosina Michelotti, Sandro Barone, Armando Viviano Razionale, Vincenzo D'Antò
掲載誌Progress in orthodontics
掲載日2019年11月
矯正歯科
マウスピース矯正デジタル矯正成人矯正比較研究

要旨

本研究は、マウスピース型矯正装置(CA)のサーモフォーミング後および口腔内使用10日後の厚み変化を評価することを目的として実施された。10名の患者を対象に、PET-G素材(0.75mm)のCAを作製し、製造直後と使用後の厚みを3Dスキャンを用いて比較検討した。その結果、サーモフォーミング工程により厚みは平均0.54mmまで有意に減少したが、10日間の口腔内使用によるさらなる厚みの減少は認められず、むしろ水分吸収等によるわずかな増加が観察された。臨床的には、製造時の厚み減少を考慮したフォースシステムの設計が重要であることが示唆された。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

イタリアのナポリ大学で行われた前向き臨床研究です。10名の患者(男性4名、女性6名、平均年齢25.8歳)を対象に、上下顎あわせて20個のマウスピース型矯正装置を分析しました。0.75mm厚のPET-Gシートを使用して製作されたアライナーについて、製造直後(ベースライン)と10日間口腔内で使用した後の厚みの変化を比較・検証しています。

🦷 使った装置・方法

Erkodur(PET-G、厚さ0.75mm)を使用し、加圧成型機でアライナーを製作しました。製作直後と10日間使用した後のアライナーをそれぞれ高精度産業用スキャナーで計測し、デジタルモデル上で厚みを解析しました。

📏 何を測った?

アライナー全体の厚みをデジタル解析(カラーマップ作成)し、元のシート厚からの変化量を測定しました。また、製造工程における厚み変化の再現性についても評価を行っています。

📊 主な結果

  • サーモフォーミング(加熱成型)の工程によって、アライナーの厚みは元の0.75mmから平均0.54mm(範囲0.38-0.68mm)へと約28%減少しました。
  • 10日間の口腔内使用後、アライナーの厚みは摩耗して薄くなることはなく、むしろ平均0.03mmの有意な増加が認められました。
  • この使用後の厚み増加は、材料の吸水性(吸湿膨張)や表面へのプラーク等の沈着物によるものと考えられます。
  • 製造工程における厚みの変化には高い再現性が確認されました。

💡 臨床で使えるポイント

アライナーは製造過程で元のシートよりもかなり薄くなる(約0.5mm程度になる)ことを前提に、矯正力を予測する必要があります。一方で、10日程度の使用期間であれば、咬合による摩耗で装置が薄くなる心配はほとんどありません。患者さんには「使っているうちに薄くなって割れる」という心配よりも、吸水による衛生管理や着脱時の変形に注意を促すと良いでしょう。