マウスピース型矯正装置と固定式装置による矯正治療中の歯根吸収の有病率と重症度:CBCTを用いた比較研究

マウスピース型矯正装置と固定式装置による矯正治療中の歯根吸収の有病率と重症度:CBCTを用いた比較研究

Prevalence and severity of apical root resorption during orthodontic treatment with clear aligners and fixed appliances: a cone beam computed tomography study.

著者Yuan Li, Shiyong Deng, Li Mei, Zhengzheng Li, Xinyun Zhang, Chao Yang, Yu Li
掲載誌Progress in orthodontics
掲載日2020年1月
矯正歯科
マウスピース矯正ブラケット矯正歯根吸収比較研究成人矯正

要旨

本研究は、マウスピース型矯正装置と固定式装置を用いた矯正治療における歯根吸収(ARR)の有病率と重症度を、歯科用コーンビームCT(CBCT)を用いて比較検討することを目的として実施された。非抜歯矯正治療を受けた成人患者70名(各群35名)を対象に、治療前後のCBCT画像を分析した。その結果、マウスピース矯正群は固定式装置群と比較して、ARRの有病率および吸収量が有意に低いことが明らかになった。特に上顎側切歯はいずれの装置でも吸収傾向が強かった。本知見は、非抜歯症例においてマウスピース矯正が歯根に対してより安全な選択肢となり得ることを示唆している。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、矯正治療による歯根吸収のリスクを比較した「後向きコホート研究」です。非抜歯で矯正治療を行った成人患者70名(合計1,120本の歯)を対象としています。対象者は、マウスピース型矯正装置(インビザライン)を使用した35名と、固定式装置(セルフライゲーションブラケット)を使用した35名に分けられました。治療前後に撮影されたCBCT画像を用いて、どちらの装置がより歯根吸収を起こしやすいかを検証しました。

🦷 使った装置・方法

マウスピース矯正群には「インビザライン」、固定式装置群には「Damon Qブラケット」を使用しました。治療開始前と治療終了後の2回、CBCT撮影を行い、歯根の長さを3次元的に計測しました。

📏 何を測った?

主要評価項目として、各歯の「歯根吸収の有無(有病率)」と「歯根吸収の量(重症度)」を測定しました。切歯、犬歯、小臼歯、第一大臼歯を含む全歯列を対象に、治療前後の歯根長の変化量を算出しました。

📊 主な結果

  • 歯根吸収の有病率:マウスピース矯正群では56.30%の歯に吸収が見られたのに対し、固定式装置群では82.11%と有意に高い割合でした。
  • 歯根吸収の量(重症度):平均吸収量はマウスピース矯正群で0.13mm、固定式装置群で0.35mmであり、固定式装置の方が有意に大きな吸収を示しました。
  • 好発部位:どちらの装置でも、上顎側切歯が最も歯根吸収を起こしやすい傾向にありました。
  • 重度吸収のリスク:固定式装置群では一部の歯に2mmを超える重度の吸収が見られましたが、マウスピース矯正群では重度の吸収は認められませんでした。

💡 臨床で使えるポイント

非抜歯症例において、歯根吸収のリスクを懸念する場合は、固定式装置よりもマウスピース型矯正装置の方が安全性が高いと言えます。ただし、マウスピース矯正であっても上顎側切歯は吸収のリスクが高いため、治療中は定期的なレントゲン確認や、過度な力がかからないような治療計画の立案が重要です。患者さんへの説明時に「マウスピースの方が歯の根っこへの負担が少ない傾向がある」というエビデンスとして活用できます。