マウスピース型矯正装置と固定式矯正装置におけるエナメル質脱灰の比較:定量的光誘導蛍光法を用いたランダム化比較試験

マウスピース型矯正装置と固定式矯正装置におけるエナメル質脱灰の比較:定量的光誘導蛍光法を用いたランダム化比較試験

Enamel demineralization during clear aligner orthodontic treatment compared with fixed appliance therapy, evaluated with quantitative light-induced fluorescence: A randomized clinical trial.

著者Ziad Albhaisi, Susan N Al-Khateeb, Elham S Abu Alhaija
掲載誌American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics
掲載日2020年8月
矯正歯科
マウスピース矯正ブラケット矯正デジタル矯正成人矯正比較研究

要旨

本研究は、マウスピース型矯正装置(CA)と固定式矯正装置(FA)による治療が、ホワイトスポット(エナメル質脱灰)の発生に及ぼす影響を比較することを目的として実施された。17〜24歳の患者49名を対象としたランダム化比較試験であり、CA群とFA群に無作為に割り付けた。定量的光誘導蛍光法(QLF: Quantitative Light-induced Fluorescence)を用いて、治療開始3ヶ月後のエナメル質蛍光消失量(ΔF)や新規病変数を評価した。結果、FA群はCA群に比べ、蛍光消失量(p=0.002)および新規脱灰数(p=0.039)が有意に多かった。CAはFAより脱灰リスクが低いが、広範囲で浅い脱灰が生じるため、装置の種類を問わず口腔衛生管理が重要である。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、矯正治療中のエナメル質脱灰(ホワイトスポット)の発生を、マウスピース型装置とワイヤー矯正装置で比較したランダム化比較試験(RCT)です。ヨルダン科学技術大学にて、17歳から24歳の患者49名(最終的に42名が完了)を対象に実施されました。対象者は、抜歯を必要としない5mm以下の軽度から中等度の叢生(ガタガタ)を持つ症例に限定されています。治療開始から3ヶ月間という、脱灰が進行しやすい初期段階の変化を詳しく調査しました。

🦷 使った装置・方法

マウスピース型矯正装置(CA)と、一般的なマルチブラケット装置(FA)を使用しました。定量的光誘導蛍光法(QLF)という特殊なカメラを用いて、肉眼では判別が難しい初期のエナメル質脱灰をデジタル画像で記録・分析しました。

📏 何を測った?

主な評価項目として、エナメル質のミネラル消失量を示す「蛍光消失率(ΔF)」を測定しました。また、新しくできた脱灰の数、脱灰の深さ、脱灰の面積、およびプラーク(歯垢)の付着面積についても評価を行いました。

📊 主な結果

  • エナメル質の蛍光消失量(脱灰の程度)は、固定式装置群で1.2%(p=0.013)、マウスピース群で0.4%(p=0.283)となり、固定式装置群の方が有意に脱灰が進行していました(p=0.002)。
  • 1人あたりの新規脱灰病変の数は、固定式装置群で8.25個、マウスピース群で6個であり、固定式装置群で有意に多く認められました(p=0.039)。
  • プラークの付着面積は、固定式装置群が10.9%であったのに対し、マウスピース群は1.2%と、固定式装置群で明らかに多い結果でした(p<0.001)。
  • 脱灰病変の面積については、マウスピース群の方が平均82.2ピクセル増加し、固定式装置群(9.3ピクセル)よりも有意に広範囲に広がっていました(p<0.001)。

💡 臨床で使えるポイント

マウスピース矯正はワイヤー矯正に比べてプラークが溜まりにくく、脱灰の数や深さを抑えられる大きなメリットがあります。しかし、マウスピース矯正でも「面積の広い浅い脱灰」は発生するため、装置が歯面を覆うことによる自浄作用の低下には注意が必要です。どちらの装置を使用する場合でも、特に治療開始後の3ヶ月間は徹底したブラッシング指導とフッ化物利用を推奨すべきです。