固定式矯正装置の装着が治療初期段階の口腔関連QOLに及ぼす影響

固定式矯正装置の装着が治療初期段階の口腔関連QOLに及ぼす影響

Fixed orthodontic appliance impact on oral health-related quality of life during initial stages of treatment.

著者Laila Fawzi Baidas, Norah AlJunaydil, Mawadh Demyati, Rawan Abu Sheryei
掲載誌Nigerian journal of clinical practice
掲載日2020年9月
矯正歯科
ブラケット矯正治療期間比較研究患者満足度成人矯正

要旨

本研究は、固定式矯正装置を用いた治療の初期段階における口腔関連クオリティ・オブ・ライフ(OHRQoL:Oral Health-Related Quality of Life)の変化を評価し、矯正治療の必要性がOHRQoLに与える影響を明らかにすることを目的として実施された。14〜24歳の患者42名を対象に、装置装着前(T0)から装着後1日(T1)、7日(T2)、14日(T3)、30日(T4)の各時点でOHIP-14質問票を用いて調査を行った。その結果、装置装着直後のT1およびT2においてOHIP-14スコアが有意に上昇(悪化)し(P < 0.001)、特に痛みや不快感、身体的・心理的障害の項目に顕著な影響が見られた。また、治療の必要性が高い症例ほどOHRQoLへの影響が大きかった。本結果は、治療初期の患者への説明やコンプライアンス向上に寄与するものである。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、固定式矯正装置を装着した直後の患者さんの生活の質(QOL)がどのように変化するかを調べた前向きコホート研究です。サウジアラビアの矯正歯科を受診した14歳から24歳の患者さん42名(女性69%)を対象としています。装置を付ける前と、付けてから1日後、7日後、14日後、30日後の計5回、アンケート調査を行いました。また、歯並びの重症度がQOLにどう影響するかも検証しています。

🦷 使った装置・方法

一般的な固定式矯正装置(マルチブラケット装置)を使用しました。患者さん自身に「OHIP-14」という14項目の質問票に回答してもらい、お口の健康状態が日常生活にどの程度影響しているかを数値化しました。

📏 何を測った?

「口腔関連クオリティ・オブ・ライフ(OHRQoL)」を主要評価項目とし、痛み、咀嚼のしにくさ、心理的な不快感など7つの領域を測定しました。あわせて、矯正治療の必要性の度合い(IOTN)も評価しました。

📊 主な結果

  • 装置を装着した直後の1日目(T1)と7日目(T2)において、全体のOHIP-14スコアが装着前(T0)と比較して有意に上昇し、QOLが低下することが示されました(p < 0.001)。
  • 装着後1日目(T1)では、痛みや不快感だけでなく、身体的障害、心理的障害、心理的不快感の各項目において、装着前より有意に悪化していました(p < 0.05)。
  • 装着から14日目(T3)および30日目(T4)になると、スコアは徐々に改善し、装着前のレベルに近づく傾向が見られました。
  • 矯正治療の必要性が最も高い「グレード4(IOTN-DHC)」の患者さんは、他のグループと比較して、多くの評価項目でQOLへの影響を強く受けていました。

💡 臨床で使えるポイント

装置装着後の1週間、特に最初の1日は痛みだけでなく心理的なストレスや日常生活への支障がピークに達することを、事前に患者さんや保護者へ説明しておくことが重要です。特に治療の必要性が高い(叢生が強い)症例では影響が大きいため、重点的なフォローアップを行いましょう。「2週間から1ヶ月で慣れてくる」という具体的な見通しを伝えることで、患者さんの不安を解消し、治療への協力度を高めることができます。