矯正治療後の固定式リテーナーは歯列の安定性を保証できるか?

矯正治療後の固定式リテーナーは歯列の安定性を保証できるか?

Do orthodontic fixed retainers guarantee the stability of dental alignment at the end of orthodontic treatment?

著者Ra'ed Al-Dboush, Eman Al-Zawawi, Tarek El-Bialy
掲載誌Evidence-based dentistry
掲載日2022年1月
矯正歯科
保定比較研究システマティックレビュー成人矯正歯の移動

要旨

本研究は、矯正治療終了後に用いられる固定式リテーナー(Fixed Retainer)が歯列の安定性をどの程度維持できるかを評価することを目的として実施された。PubMedやScopus等の主要データベースを用い、2021年2月までに発表された臨床研究を対象にシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。最終的に21件の論文が解析対象となった。結果として、固定式リテーナーの失敗率は7.3%から50%と幅広く、特に上顎は下顎よりも失敗率が高いことが示された。また、全歯に接着するタイプは両端のみのタイプより安定性が高かった。本研究は、固定式リテーナーのみでは歯列の安定を完全には保証できず、術者の技術や設計の選択が重要であることを示唆している。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、矯正治療後の保定に用いられる固定式リテーナーの有効性と故障率を調査したシステマティックレビューおよびメタ解析です。合計21件の臨床研究(16件のランダム化比較試験、3件の後向きコホート研究、2件の症例対照研究)を対象としています。矯正治療を終えた患者を対象に、使用されたワイヤーの種類、接着材料、接着方法、および接着範囲がリテーナーの生存率や歯列の安定性にどう影響するかを包括的に検証しました。

🦷 使った装置・方法

歯の裏側に歯科用接着剤で固定する「固定式リテーナー(リンガルリテーナー)」を対象としました。具体的には、ステンレススチール製のワイヤーやファイバー強化型スプリントなどの材料、および直接接着法と間接接着法の違いについて比較を行っています。

📏 何を測った?

主な評価項目として、リテーナーの脱離や破損といった「失敗率(Failure rate)」と、後戻りを防ぐための「歯列の安定性」を測定しました。

📊 主な結果

  • 固定式リテーナーの失敗率は7.3%から50%と報告されており、研究によって大きなばらつきがあることが示されました。
  • 上顎に装着された固定式リテーナーは、下顎に装着されたものよりも失敗率が高い傾向にありました。
  • すべての歯に接着するタイプのリテーナーは、両端の歯のみに接着するタイプと比較して、歯列の並びを維持する効果がより高いことが確認されました。
  • 間接接着法(インダイレクトボンディング)は、直接接着法と比較してチェアタイムを短縮できるという利点はあるものの、失敗率に関しては有意な差は認められませんでした。
  • ファイバー強化型コンポジットを用いたリテーナーは術者の技術に敏感であり、不適切な手技を用いると失敗率が高くなることが示されました。

💡 臨床で使えるポイント

固定式リテーナーを装着していても、最大50%の確率で脱離や破損が起こり得ることを念頭に置き、患者さんには「装置は外れる可能性があること」を事前に十分説明しておく必要があります。特に上顎の症例や、犬歯間のみを固定するタイプでは注意が必要です。より確実な保定を目指すなら、全歯接着タイプの選択を検討し、定期検診での接着状態のチェックを欠かさないようにしましょう。