マウスピース矯正と固定式装置治療の臨床的有効性の比較:システマティックレビューの概観

マウスピース矯正と固定式装置治療の臨床的有効性の比較:システマティックレビューの概観

Clinical effectiveness of clear aligner treatment compared to fixed appliance treatment: an overview of systematic reviews.

著者Yassir A Yassir, Sarah A Nabbat, Grant T McIntyre, David R Bearn
掲載誌Clinical oral investigations
掲載日2022年3月
矯正歯科
マウスピース矯正ブラケット矯正治療期間歯の移動歯根吸収比較研究システマティックレビュー

要旨

本研究は、マウスピース型矯正装置(CAT)と固定式矯正装置(FAT)の臨床的有効性を比較した既存の証拠を評価することを目的として実施された。主要データベースから2021年6月までのシステマティックレビューを検索し、AMSTAR-2を用いて質を評価した上で8編を解析した。結果、CATはFATと比較して治療期間が短く、歯周組織の健康状態が良好である一方、咬合接触やトルクコントロールにおいてはFATが優れていることが示された。軽度から中等度の症例においてCATは有効な選択肢であるが、複雑な歯の移動には限界があることが示唆される。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

これは「システマティックレビューのオーバービュー」と呼ばれる、過去に行われた複数のシステマティックレビューをさらに統合して分析した、エビデンスレベルの高い研究です。2021年6月までに発表された論文の中から、マウスピース矯正(CAT)と固定式装置(FAT)を比較した8つのシステマティックレビューを厳選して解析しました。軽度から中等度の不正咬合を持つ患者さんを対象に、治療期間、治療結果の質、副作用などを総合的に比較検証しています。

🦷 使った装置・方法

インビザラインに代表されるマウスピース型矯正装置と、従来のブラケットとワイヤーを用いた固定式装置(マルチブラケット装置)を比較対象としています。

📏 何を測った?

治療にかかった期間、治療後の咬合状態(ABOスコアや咬合接触)、歯周組織の健康状態、歯根吸収の有無、治療中の痛みなどを主要評価項目として測定しました。

📊 主な結果

  • 治療期間については、マウスピース矯正の方が固定式装置よりも短くなる傾向が認められました(中等度のエビデンス)。
  • 歯周組織の健康状態に関しては、マウスピース矯正の方が良好な結果を示しました(中等度のエビデンス)。
  • 一方で、咬合接触の緊密さ、歯のねじれ(トルク)のコントロール、保定の安定性については、固定式装置の方が優れていました(中等度のエビデンス)。
  • セファロ分析による骨格的な変化には、両者に有意な差は見られませんでした(低いエビデンス)。
  • 歯根吸収や治療中の痛みについては、マウスピース矯正の方が少ない傾向にありました(低いエビデンス)。

💡 臨床で使えるポイント

マウスピース矯正は、歯周病リスクの高い患者さんや、治療期間を短縮したい軽度〜中等度の症例には非常に適した選択肢です。しかし、咬合の緊密な仕上げや歯根のトルクコントロールが必要な難症例では、固定式装置の方が確実性が高いと言えます。患者さんには「マウスピース矯正は快適で清掃性が高いが、細かい仕上げには限界がある場合がある」ことを説明し、症例によっては最終段階で部分的なブラケット装着が必要になる可能性も伝えておくと良いでしょう。