アライナー矯正装置を用いた外科的矯正治療における術前脱代償の精度評価

アライナー矯正装置を用いた外科的矯正治療における術前脱代償の精度評価

Presurgical orthodontic decompensation with clear aligners.

著者Amalia Cong, Antonio Carlos de Oliveira Ruellas, Sandra Khong Tai, Charlene Tai Loh, Mary Barkley, Marilia Yatabe, Marco Caminiti, Camila Massaro, Jonas Bianchi, Romain Deleat-Besson, Celia Le, Juan Carlos Prieto, Najla N Al Turkestani, Lucia Cevidanes
掲載誌American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics
掲載日2022年10月
矯正歯科
マウスピース矯正顎矯正歯の移動デジタル矯正成人矯正比較研究

要旨

本研究は、外科的矯正治療を伴うアライナー矯正において、術前矯正(脱代償)時の歯の移動精度を3次元的に評価することを目的として実施された。骨格性III級不正咬合患者16名を対象に、インビザラインによる術前矯正の開始時と終了時(手術直前)のCBCT画像を用いて、デジタル計画上の予測位置と実際の歯の移動量を比較検討した。その結果、全体的な歯列の整列は可能であったものの、上顎切歯のトルク、下顎犬歯の回転、および臼歯部の側方拡大において、予測と実際の結果に有意な差が認められた。アライナーによる術前脱代償は臨床的に許容範囲内であるが、特定の移動様式においてはオーバーコレクションや補助的な処置が必要であることが示唆された。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

骨格性の受け口(クラスIII)と診断され、外科的矯正治療(顎の手術を併用する矯正)を行うことになった患者さん16名を対象とした後ろ向き研究です。 手術の前に行う「術前矯正(脱代償)」をマウスピース型矯正装置(インビザライン)で行った場合、治療計画通りに歯が動いているかを検証しました。 治療開始前と手術直前の2回撮影したCBCT(歯科用CT)データを使用し、3次元的な重ね合わせ技術を用いて精度の評価を行っています。

🦷 使った装置・方法

インビザライン(アライン・テクノロジー社)を使用しました。 治療計画シミュレーション(クリンチェック)上の歯の位置と、実際に術前矯正が終わった時点での歯の位置を、デジタル技術で重ね合わせてズレを計測しました。

📏 何を測った?

各歯の「近遠心・頬舌的な傾斜(トルク・チップ)」、「回転(ローテーション)」、「前後左右の移動量」について、予測値と実測値の差を測定しました。

📊 主な結果

  • 上顎の中切歯(真ん中の前歯)のトルクコントロールにおいて、計画と実際の結果に統計的に有意な差が見られ、予測よりも不十分な移動にとどまる傾向がありました。
  • 下顎の犬歯の回転(ねじれ)の修正に関しても、計画通りに動かないケースが多く見られました。
  • 臼歯部(奥歯)の幅径の拡大については、予測された移動量よりも実際には少なくなる傾向がありました。
  • 全体として、歯冠(歯の頭の部分)の移動はある程度達成されていましたが、歯根(根っこ)のコントロールには限界があることが示されました。

💡 臨床で使えるポイント

外科症例の術前矯正にアライナーを使うことは可能ですが、ブラケット矯正に比べて「歯根のトルク」や「回転」のコントロールが難しいです。 特に上顎前歯の角度づけや犬歯のねじれ、奥歯の拡大が必要な場合は、クリンチェック作成時にあらかじめ過剰に動かす設定(オーバーコレクション)を盛り込む必要があります。 また、必要に応じてボタンやエラスティック、アタッチメントの工夫を早期から検討することをお勧めします。