固定式矯正装置装着中における初期う蝕へのレジン浸潤法の短期的有効性:ランダム化比較試験

固定式矯正装置装着中における初期う蝕へのレジン浸潤法の短期的有効性:ランダム化比較試験

Short-term efficacy of caries resin infiltration during treatment with orthodontic fixed appliances. A randomized controlled trial.

著者Richard Johannes Wierichs, Sotiria Bourouni, Elena Kalimeri, Sofia Gkourtsogianni, Hendrik Meyer-Lueckel, Dimitrios Kloukos
掲載誌European journal of orthodontics
掲載日2023年4月
矯正歯科
ブラケット矯正小児矯正成人矯正審美比較研究

要旨

本研究は、固定式矯正装置を用いた治療中に発生した初期う蝕(ICL)に対し、レジン浸潤法が審美的な改善(マスキング効果)をもたらすかを検証することを目的として実施された。12〜18歳の患者15名(計60歯の初期う蝕)を対象に、口腔内を左右に分けるスプリットマウス法を用い、レジン浸潤法(Icon)群とフッ化物塗布群にランダムに割り当てた。治療1週間後の評価の結果、レジン浸潤群では色差(ΔE)、レーザー蛍光値、ICDAS(国際う蝕検出評価システム)スコアがいずれも有意に改善したが、フッ化物群では有意な変化は認められなかった。本結果は、矯正治療中の初期う蝕に対するレジン浸潤法が、即時的な審美改善に有効であることを示唆している。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、矯正装置がついている間にできてしまった「初期の虫歯(白濁)」に対して、樹脂を染み込ませる治療(レジン浸潤法)がどれくらい見た目を改善するかを調べたランダム化比較試験です。12歳から18歳のアドレナリン世代の患者さん15名を対象とし、合計60か所の初期虫歯を調査しました。1人の患者さんのお口の中で、右側と左側で異なる治療を行う「スプリットマウス法」を採用し、治療から1週間後の経過を比較しています。

🦷 使った装置・方法

初期虫歯(ICDASスコア1または2)に対し、一方にはレジン浸潤材(商品名:Icon)を最大3回のエッチング工程を含めて使用し、もう一方には比較対照としてフッ化物バニッシュ(商品名:Tiefenfluorid)を塗布しました。

📏 何を測った?

治療前と治療1週間後に、デジタル写真を用いた色の変化(ΔE)、レーザー蛍光強度(DD)による虫歯の深さの測定、および視診による虫歯の進行度(ICDASスコア)の3項目を評価しました。

📊 主な結果

  • 治療1週間後、レジン浸潤群では色の変化を示すΔE値が有意に減少し、白濁が目立たなくなるマスキング効果が確認されました(p < 0.001)。
  • レジン浸潤群では、レーザー蛍光値(p < 0.001)およびICDASスコア(p = 0.014)も有意に改善しました。
  • 一方、フッ化物塗布群では、ΔE値(p = 0.125)やICDASスコア(p = 0.073)に有意な変化は見られず、即時的な見た目の改善は起こりませんでした。
  • 治療開始時点では、両グループ間に色の濃さや虫歯の状態に統計的な差はありませんでした(中央値 ΔE0,T: 10.7 vs ΔE0,I: 13.4, p = 0.469)。

💡 臨床で使えるポイント

矯正治療中にブラケットの周囲に白濁(脱灰)が生じてしまった場合、フッ化物塗布だけではすぐには見た目が良くなりません。レジン浸潤法(Iconなど)を活用することで、装置がついた状態でも短期間で審美的に白濁を改善できる可能性があります。ただし、長期的な虫歯抑制効果については今後の検証が必要なため、まずは「見た目の早期改善」というメリットを患者さんに説明する際に役立てると良いでしょう。