1級非抜歯症例における従来型およびセルフライゲーション裏側矯正装置の治療結果の比較:ABO客観的評価システムを用いた検討

1級非抜歯症例における従来型およびセルフライゲーション裏側矯正装置の治療結果の比較:ABO客観的評価システムを用いた検討

Conventional and self-ligating lingual orthodontic treatment outcomes in Class I nonextraction patients: A comparative study with the American Board of Orthodontics Objective Grading System.

著者Yağmur Lena Sezici, Mehmet Gökhan Önçağ
掲載誌American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics
掲載日2023年3月
矯正歯科
ブラケット矯正治療期間比較研究成人矯正歯の移動

要旨

本研究は、1級非抜歯症例において、従来型の裏側矯正装置とセルフライゲーション(自己結紮型)裏側矯正装置の治療期間および治療結果を比較することを目的として実施された。アングル1級不正咬合の患者30名を対象に、従来型(STb)またはセルフライゲーション型(GC Experience-L)を用いて治療を行い、アメリカ矯正歯科ボード(ABO: American Board of Orthodontics)の客観的評価システムを用いて評価した。結果、治療期間は従来型で2.10±0.69年、セルフライゲーション型で1.68±0.48年であり、ABOスコアも含め両群間に有意差は認められなかった(p>0.05)。本研究により、裏側矯正装置の種類は治療の質や期間に大きな影響を与えないが、いずれの装置も頬舌的傾斜の改善に課題があることが示唆された。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、裏側矯正(舌側矯正)で使用する装置の違いが治療結果にどう影響するかを調べた比較研究です。アングル1級の不正咬合を持ち、抜歯をせずに治療を行った患者さん30名を対象としています。従来型の装置を使用するグループと、ワイヤーの固定が簡単なセルフライゲーション型の装置を使用するグループに分けて比較しました。治療開始から終了までの期間と、治療後の歯並びの完成度を詳しく分析しています。

🦷 使った装置・方法

従来型の裏側装置として「STb(オームコ社)」、セルフライゲーション型の裏側装置として「GC Experience-L(GCオーソドンテックス社)」を使用しました。

📏 何を測った?

治療にかかった期間(年数)と、アメリカ矯正歯科ボード(ABO)が定めた客観的評価システムを用いて、治療後の歯の並びや噛み合わせの精度を点数化して測定しました。

📊 主な結果

  • 治療期間は、従来型グループで平均2.10±0.69年、セルフライゲーション型グループで平均1.68±0.48年であり、統計的な有意差は見られませんでした(p > 0.05)。
  • 治療後のABOスコアは、従来型が20.23±5.13点、セルフライゲーション型が21.00±5.66点であり、装置による仕上がりの差は認められませんでした(p > 0.05)。
  • 両方のグループにおいて、最も点数が低かった(減点が多く改善が不十分だった)項目は、歯の「頬舌的な傾斜」のコントロールでした。
  • 一方で、どちらの装置も「空隙の閉鎖」「前歯の捻転(ねじれ)の改善」「オーバージェット(前後的な重なり)の調整」については、装置の種類に関わらず良好な結果が得られました。

💡 臨床で使えるポイント

裏側矯正において、セルフライゲーション型装置を使っても従来型と比べて治療期間が劇的に短縮されたり、仕上がりが向上したりするわけではないことが分かりました。どちらの装置を使用する場合でも、裏側矯正では特に「歯の傾き(トルク)」のコントロールが難しいため、仕上げの段階で細かな調整を意識することが、より質の高い治療結果につながります。