矯正用クリアアライナーが筋活動と咬合接触に及ぼす短期的影響:コホート研究

矯正用クリアアライナーが筋活動と咬合接触に及ぼす短期的影響:コホート研究

Short-term effect of orthodontic clear aligners on muscular activity and occlusal contacts: A cohort study.

著者Michele Tepedino, Pietro Colasante, Edoardo Staderini, Francesco Masedu, Domenico Ciavarella
掲載誌American journal of orthodontics and dentofacial orthopedics : official publication of the American Association of Orthodontists, its constituent societies, and the American Board of Orthodontics
掲載日2023年6月
矯正歯科
マウスピース矯正成人矯正デジタル矯正治療期間

要旨

本研究は、クリアアライナー(CA)治療中の咬合接触および筋バランスの変化を短期間で評価することを目的として実施された。平均年齢28.3歳の患者20名を対象とした前向きコホート研究であり、治療開始前、アライナー装着直後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後に、表面筋電図とT-Scanを用いて評価を行った。その結果、装着直後には咬合接触面積の減少と筋バランスの変化が認められたが、1ヶ月後以降は適応が見られ、筋活動のバランスは治療前と同等または改善傾向を示した。CA装着による咬合変化に対し、神経筋機構は短期間で適応することが示唆された。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、20名の成人患者(平均年齢28.3歳)を対象とした前向きコホート研究です。マウスピース型矯正装置(クリアアライナー)を使用する患者について、治療開始前から治療開始6ヶ月後までの期間を追跡調査しました。アライナーを装着することで、噛み合わせの接触状態や顎を動かす筋肉の活動がどのように変化し、またその変化に対して体がどのように適応していくかを検証しました。

🦷 使った装置・方法

矯正装置としてクリアアライナーを使用し、評価には噛む筋肉の活動を測る表面筋電図(Teethan)と、咬合接触状態をデジタル分析するT-Scanを用いました。

📏 何を測った?

主に咬筋と側頭筋の活動バランスを示すPOC(オーバーラッピング係数)や、咬合の重心位置(BAR)、および咬合接触面積や咬合力を測定しました。

📊 主な結果

  • アライナーを初めて装着した直後(T1)では、装置の厚みにより咬合接触面積が有意に減少し、筋肉のバランスも一時的に変化しました。
  • 治療開始から1ヶ月後(T2)の時点で、筋肉の活動バランス(POC)は治療前の状態まで回復、あるいは改善する傾向が見られました。
  • 咬合の重心位置(BAR)に関しては、アライナー装着中も後方(臼歯部寄り)に維持されており、大きな不安定化は見られませんでした。
  • 6ヶ月間の観察期間を通じて、神経筋システムはアライナーによる咬合の変化に対して迅速に適応することが確認されました。

💡 臨床で使えるポイント

患者さんがアライナー装着直後に「噛み合わせに違和感がある」「噛みにくい」と訴えても、それは一時的なものであり、約1ヶ月程度で筋肉や神経が適応することを説明して安心させてあげましょう。アライナーの厚みによる即時的な変化は生理的に許容される範囲内であり、神経筋機構の適応能力が高いことが裏付けられています。