矯正用クリアアライナーおよび透明な真空形成熱可塑性リテーナーの生体適合性と安全性に関するシステマティックレビュー:BPA溶出、有害事象、細胞毒性、およびエストロゲン様作用について

矯正用クリアアライナーおよび透明な真空形成熱可塑性リテーナーの生体適合性と安全性に関するシステマティックレビュー:BPA溶出、有害事象、細胞毒性、およびエストロゲン様作用について

A systematic review of biocompatibility and safety of orthodontic clear aligners and transparent vacuum-formed thermoplastic retainers: Bisphenol-A release, adverse effects, cytotoxicity, and estrogenic effects.

著者Marzie Yazdi, Hanie Daryanavard, Alireza Hashemi Ashtiani, Mehrnaz Moradinejad, Vahid Rakhshan
掲載誌Dental research journal
掲載日2023年9月
矯正歯科
マウスピース矯正保定システマティックレビュー

要旨

本研究は、需要が急増している矯正用クリアアライナーおよび真空形成リテーナーの生体適合性と安全性を評価することを目的として実施された。主要データベースを用いて2022年1月までの文献を検索し、ビスフェノールA(BPA)溶出、細胞毒性、有害事象等を報告した30本の論文を対象にシステマティックレビューを行った。その結果、BPA溶出量は一般に基準値以下であり、細胞毒性は軽度から中等度であることが示されたが、製造法や使用環境により変動が見られた。臨床的には概ね安全と考えられるが、長期使用時の累積的な影響には留意が必要である。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、マウスピース矯正装置やリテーナーの安全性を検証したシステマティックレビューです。2022年1月までに発表された論文を検索し、最終的に30本の研究(BPA溶出に関する13本、細胞毒性に関する13本、有害事象に関する4本など)を対象としました。インビザラインなどのクリアアライナーや真空形成リテーナー(VFR)が、人体にどのような化学的・生物学的影響を与えるかを包括的に調査しています。

🦷 使った装置・方法

様々なメーカーのクリアアライナーおよび熱可塑性リテーナーを対象とした実験研究(in vitro)や臨床報告を分析しました。

📏 何を測った?

主な評価項目は、ビスフェノールA(BPA)の溶出量、細胞毒性(細胞生存率)、臨床的な有害事象(呼吸器症状や疼痛など)、およびエストロゲン様作用の有無です。

📊 主な結果

  • BPA溶出に関しては、多くの研究で検出されなかったか、基準値を大きく下回る微量(無視できるレベル)であることが報告されました。
  • 細胞毒性については、全く毒性がないものから中等度の毒性を示すものまで幅があり、素材や浸漬時間によって結果が異なりました。
  • 有害事象として、呼吸困難、アナフィラキシー反応、軟組織の刺激、および装着時の疼痛などが報告されている研究がありました。
  • エストロゲン様作用については、調査された範囲では有意な影響は認められませんでした。

💡 臨床で使えるポイント

基本的には生体適合性が高く安全な装置ですが、熱や摩耗によってBPA溶出のリスクが変わる可能性があります。患者さんには「装置を熱湯で洗浄しないこと」や「破損した場合は使用を控えること」を指導すると良いでしょう。また、稀にアレルギーや呼吸器症状が出る可能性があるため、装着初期の問診や経過観察は丁寧に行うことが推奨されます。