固定式装置による矯正治療後のホワイトスポット:15年以上の長期的な自然改善は期待できるか?

固定式装置による矯正治療後のホワイトスポット:15年以上の長期的な自然改善は期待できるか?

White spot lesions after fixed appliance treatment-Can we expect spontaneous long-term (≥15 years) improvement?

著者Niko Christian Bock, Julia von Bremen, Katharina Klaus, Nelly Schulz-Weidner, Carolina Ganss, Sabine Ruf
掲載誌European journal of orthodontics
掲載日2024年1月
矯正歯科
ブラケット矯正成人矯正審美比較研究

要旨

本研究は、マルチブラケット装置を用いた矯正治療後に発生したホワイトスポット(WSL:White Spot Lesions)が、15年以上の長期経過でどのように変化するか、およびう蝕経験との関連を調査することを目的として実施された。Herbst装置およびマルチブラケット装置で治療を受けた患者72名を対象に、治療終了直後(T1)から平均18.3年後(T3)までの口腔内写真と臨床データを後ろ向きに解析した。その結果、治療直後にWSLが認められた切歯のうち、48%で改善が認められ、28%では完全に消失した。一方で、WSLを認めた患者は、認めなかった患者と比較して治療後のMFT値(処置歯数)が有意に高いことが示された。本結果は、WSLの長期的改善の可能性を示すとともに、WSL発生患者に対する継続的なう蝕予防管理の重要性を示唆している。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

固定式装置(マルチブラケット)を用いた矯正治療後にできてしまったホワイトスポット(WSL)が、15年以上という超長期的な経過の中でどのように変化するかを調べた後ろ向きコホート研究です。平均14歳で治療を開始し、約20ヶ月間の治療を受けた72名の患者さんを対象としています。治療終了から平均18.3年後のリコール時までを追跡しており、治療前・治療終了時・長期経過時の口腔内写真を用いて、前歯部のWSLの状態を詳しく比較・検証しました。

🦷 使った装置・方法

Herbst装置(下顎前方誘導装置)とマルチブラケット装置を併用して治療を行いました。評価には、治療前(T0)、治療終了時(T1)、数年後の経過時(T2)、15年以上の長期経過時(T3)の口腔内写真と、う蝕の指標であるMFT(未処置・処置歯数)データを使用しています。

📏 何を測った?

5人の歯科医師が、Gorelickの指標を修正した評価法を用いてWSLの程度をスコア化しました。また、PancherzとMuehlichの指標を用いてWSLが「改善」「不変」「悪化」のどれに該当するかを評価し、同時にレントゲンや臨床診査からう蝕の発生状況(MFT値)を測定しました。

📊 主な結果

  • 治療終了直後(T1)において、患者の37.5%に少なくとも1歯以上のWSLが認められ、切歯全体の14.9%(81歯)が影響を受けていました。
  • 15年以上の長期経過後(T3)において、WSLが認められた歯のうち48%で状態の改善が確認されました。
  • 治療直後にWSLがあった歯のうち、28%は長期経過時にスコア0(消失)となり、完全に自然回復していました。
  • WSLの重症度を示す指標(WSL-Index)は、治療直後の1.2 ± 0.4から長期経過後には0.8 ± 0.6へと有意に減少しました(P < 0.001)。
  • 治療直後にWSLがあった患者は、なかった患者に比べて、その後のMFT値が有意に高く、う蝕のリスクが高い傾向にありました(P ≤ 0.05)。

💡 臨床で使えるポイント

矯正治療後にできてしまったホワイトスポットは、15年以上の長いスパンで見れば約半数が改善し、4分の1以上は自然に消える可能性があります。そのため、治療直後に削って詰めるような侵襲的な処置を急ぐ必要はありません。ただし、WSLができてしまった患者さんは将来的に他の部位でも虫歯になりやすい「ハイリスク群」であるため、装置撤去後も長期的なメインテナンスとフッ化物利用などの予防指導を継続することが重要です。