固定式装置を用いた矯正治療は初期う蝕を誘発するか?:システマティックレビューおよびメタ解析

固定式装置を用いた矯正治療は初期う蝕を誘発するか?:システマティックレビューおよびメタ解析

Does orthodontic treatment using fixed appliances cause initial caries lesions?

著者Rahma ElNaghy, Mona El Sayed, Radwa Alsherbiny Alnaghy, Majd Hasanin
掲載誌Evidence-based dentistry
掲載日2024年9月
矯正歯科
ブラケット矯正治療期間比較研究システマティックレビュー成人矯正小児矯正

要旨

本研究は、固定式装置を用いた矯正治療が初期う蝕(Initial Caries Lesions: ICLs)の発生率および有病率に与える影響を評価することを目的として実施された。1990年から2023年5月までに発表されたランダム化比較試験(RCT)やコホート研究など21件を対象にシステマティックレビューを行い、うち19件でメタ解析を実施した。その結果、矯正患者の57%にICLsが認められ、治療中に新たにICLsが発生した割合は48%であった。ICLsの発生は治療期間の長さに正の相関を示したが(p < 0.01)、年齢との関連は認められなかった。固定式装置は脱灰リスクを高めるため、治療中の予防処置の徹底が不可欠である。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

固定式矯正装置が初期う蝕(ホワイトスポットなど)の発生にどの程度影響するかを調査した、信頼性の高いシステマティックレビューおよびメタ解析です。1990年から2023年までに発表された11件のランダム化比較試験(RCT)を含む計21件の研究を精査し、データを統合しました。永久歯列で固定式装置による治療を受けた患者さんを対象とし、装置装着によるむし歯のリスクを具体的な数値で検証しています。数千人規模のデータを背景に、治療期間や年齢がリスクにどう関わるかを明らかにしました。

🦷 使った装置・方法

マルチブラケット装置などの固定式矯正装置を使用している患者さんを対象に、治療中および治療後の歯面の状態を分析しました。

📏 何を測った?

患者単位および歯の面単位での初期う蝕(ICLs)の有病率(すでにある割合)と、治療中に新しく発生した割合(発生率)を主要な指標として測定しました。

📊 主な結果

  • 矯正治療を受けている患者さんの57%に初期う蝕が認められ、1人あたり平均2.24個の病変が存在していました。
  • 治療中に新しく初期う蝕が発生した患者さんは48%にのぼり、全歯面の15%が新たに脱灰の影響を受けていました。
  • 初期う蝕の発生数と有病率は、矯正治療の期間(月数)が長くなるほど有意に増加することが示されました(p < 0.01)。
  • 患者さんの年齢と初期う蝕の発生数との間には、統計的に有意な関連性は認められませんでした。

💡 臨床で使えるポイント

固定式装置を使用する場合、約2人に1人の割合で新しい初期う蝕が発生するという高いリスクを再認識する必要があります。特に治療期間が長期化する症例ではリスクが蓄積するため、ブラッシング指導の徹底に加え、高濃度フッ化物配合歯磨剤の使用やオフィスでのフッ化物塗布などの予防介入を、治療開始時からルーチンで行うことが推奨されます。