担当医の交代がツインブロック装置および非抜歯マルチブラケット装置による矯正治療の期間と結果に及ぼす影響:後方視的コホート研究

担当医の交代がツインブロック装置および非抜歯マルチブラケット装置による矯正治療の期間と結果に及ぼす影響:後方視的コホート研究

The influence of orthodontist change on treatment duration and outcomes in patients treated with Clark's twin block appliance followed by non-extraction fixed mechanotherapy - a retrospective cohort study.

著者Rizwan Khalil, Rashna Hoshang Sukhia, Mubassar Fida
掲載誌BMC oral health
掲載日2024年12月
矯正歯科
ブラケット矯正顎矯正治療期間比較研究小児矯正

要旨

本研究は、大学病院等の教育機関において担当医(レジデント)の交代が矯正治療の効率と質に与える影響を明らかにすることを目的として実施された。ツインブロック装置の後に非抜歯マルチブラケット装置で治療を完了した66名を対象に、担当医が交代した群(33名)と同一の担当医が継続した群(33名)を比較する後方視的コホート研究を行った。主要評価項目としてABO-CRE(米国矯正歯科ボードの評価指標)およびPAR(歯列不正の改善指標)指数を用いた治療結果の質と、治療期間を評価した。結果、治療の質には両群間で有意差は認められなかったが(p>0.05)、治療期間は交代群で56.12±19.68ヶ月、非交代群で35.09±6.94ヶ月であり、交代群で有意に延長した。担当医の交代は治療の質を低下させないが、治療期間を大幅に延ばす要因となることが示唆された。

論文まとめ

🔬 どんな研究?

この研究は、過去の診療記録を振り返って調査した「後方視的コホート研究」です。大学病院などの教育機関でよく起こる「担当医(研修医)の交代」が、治療の質や期間にどのような影響を及ぼすかを調べています。対象は、ツインブロック装置とワイヤー矯正(非抜歯)で治療を受けた患者さん合計66名です。担当医が途中で変わった「引き継ぎ群(33名)」と、最初から最後まで同じ医師が担当した「継続群(33名)」の2つのグループを比較しました。

🦷 使った装置・方法

まずクラークのツインブロック装置(機能的顎矯正装置)を使用して顎の成長を促し、その後に抜歯を行わないマルチブラケット装置(ワイヤー矯正)で仕上げを行いました。

📏 何を測った?

治療前後の歯列模型とパノラマX線写真を使用し、ABO-CRE(米国矯正歯科ボードの評価指標)とPAR指数という2つの客観的な指標を用いて治療の「質」を測定しました。あわせて、治療にかかった総期間も算出しました。

📊 主な結果

  • 治療後の仕上がりの質(ABO-CRE)については、引き継ぎ群と継続群の間で統計的な差は認められませんでした(p = 0.691)。
  • 歯並びの改善度(PAR指数)についても、両群間に有意な差はなく、どちらも良好に改善していました(p = 0.926)。
  • 治療期間は、引き継ぎ群が平均56.12 ± 19.68ヶ月だったのに対し、継続群は平均35.09 ± 6.94ヶ月と、引き継ぎ群の方が約21ヶ月も長くかかっていました。
  • 引き継ぎ群では、治療期間の延長に伴い、通院回数も有意に多くなる傾向が確認されました。

💡 臨床で使えるポイント

担当医が変わっても最終的な治療の質は維持できますが、治療期間が大幅に延びる(本研究では約1.7倍)ことを事前に患者さんへ説明しておく必要があります。特に教育機関や転勤の多いクリニックでは、引き継ぎによるタイムロスを最小限にするための詳細な申し送りと、治療方針の一貫性を保つシステム作りが、患者満足度を維持する鍵となります。